ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を』
興味深かったのは、これらがまるでダンスカンパニーの作品のように感じられる要素を持っていたことです。美術と衣裳、演者の動き。各々のシーンが、観ている者の記憶と想像力をフルスロットルで叩き起こす。舞台上に五人の男が現れる。揃いの黒いスーツ。一瞬喪服かと思うが、ネクタイに柄がある。手にはやはり揃いの黒いキャリーバッグ。限りなくダンスに近い、キャリーをひく五人の歩行。このシーンだけでも、砂漠監視隊(観ていないのに!想像力を喚起させる言葉の力)、砂丘、植田正治、青山演劇フェスティバル、トランス、鴻上尚史、ハッシャ・バイ、パレード旅団、フィリップ・ジャンティと言うイメージが数珠繋ぎに拡大される。公的なこと、私的なこと、さまざまなイメージだ。

ブルーシート、荒れる上司、何度も並べ替えられる大量の椅子。支離滅裂であり乍ら整然とした状況の変化と、迅速に右往左往する者たちから想像されるものは何か?宣美の写真にもある、花見が行われていた場所はどこだ?春に、桜の下で、私たちは何をはじめるのだ?それは言葉も同様で、「門が閉まる」「時間切れだ」(ここからのシークエンスにはシビれた)と言った台詞からは“狭き門より入れ”、聖書(これは実際にモチーフとして出てくる)、反復、前川知大、概念、略奪、と言ったイメージが次々に浮かぶ。ときには自分の脳の処理速度が追いつかず苛立つことすらあった。そして実際「オフト」が出て来なかった(笑)。オチかこれは。くやしい!「オ」てきたら「オシム」から遡れなかった!(笑)ノスタルジーはドタバタに踏み荒らされ、怒りのエネルギーはギリギリの笑いでワイルドサイドを走る。なんてスリル、なんてエキサイティング!

なんとか説明したい思いからつらつら駄文をつらねてますが、ひとことで言えばもう、めちゃくちゃ格好よかったんです。ああ、格好よかった!格好よかった!!!

近年シティボーイズって別枠で観てる感じなんですが…別枠ってのは、ああおじいちゃんたちががんばってるう、この三人さえ揃えばなんでも楽しいって意味で……実際もうその存在だけで面白いので、こう思ってしまうのは失礼かも知れないけど悪いとは思わないのですよ。そういう存在ってスペシャルだから。やっぱり年齢のこともあるし、観られるだけで嬉しいってところもあるんです。でも今回はもうそういうの関係なしで、舞台作品としてもものすごく衝撃を受けた。「今の笑いを教えてほしい」と宮沢さんを呼び出した安定志向なんてどこ吹く風のきたろうさんや、身体大丈夫か!?と心配になってしまう程のまことさんの縦横無尽(まさかまことさんの木村伝兵衛が観られるとは!まず机にバーン!て上げられる脚に感動したよね…わっあんなに脚上がるんだ!って・笑)、リアルで出ずっぱり(笑)のゆうじさん、テンションの持って行き場が全く読めない戌井さん、そんな男たちの間をふわりふわりと駆け抜け、彼らの尻を叩く笠木さん。いつもは三人の「翻訳」を務めるようなせいこうさんが同じ線上に立っているように感じたことや、近年定番になっていたようなしげるさんの破壊兵器っぷりが影を潜め、それでもしげるはしげる(笑)だったことも新鮮でした。ドリームチームみたいな座組だった。

と言いつつ、「(チーズ)ケーキです」(ケーキを置く)「コーヒーです」(コーヒーを置く)を「ケーキです」(ケーキを置く)「チーズケーキです」(コーヒーを置く)「コーヒーです」(エアー)と言ってごまかしきろうとしたきたろうさんには舌を巻いたな(笑)予測不可能過ぎる。「ケーキです」で充分通じるのになんで言い直すかな!最高!そして逃げようとしたきたろうさんの腕をふん捕まえて追及したまことさんも最高。

いんやそれにしても、そこに立つ人物含めた舞台空間が本当に素晴らしかった。全景をひきで観られる席で至福でした。しかし今、それがよかったからこそ他の角度から観てみたいと言う気持ちも猛烈に沸き上がっている。今回のチケットホントに激戦だったようで、ギリ迄プレが外れまくって冷や汗かいた程だったのですが、当日券が毎日出ると言う宮沢さんのツイートを見てリピート欲が…ううう……。


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04月06日(土)
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