ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[648641hit]
■『2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」』
こまどり姉妹はその、向こうの世界からやってくる。このインパクトと言ったらもう(白目)しかも彼女たちが登場するのは、ハムレットがオフィーリアを「尼寺へ行け!」と罵倒する、この作品の代名詞とも言える有名かつエモーショナルなシーンです。突っ伏して号泣するオフィーリア、のたうちまわり慟哭するハムレット、そこを「幸せになりたいの〜♪」と唄い乍ら通過するこまどり姉妹……カオス!なんだかもー気が狂いそうでした。しかし彼女たちが唄い乍らステージに上がったときに自然発生した拍手は、「おもしれー!なんじゃこれ!」と言ったヒステリックなものではなく、敬意が込められたものだったのです。彼女たちには自然と拍手をしてしまう説得力があった。歌の内容、波乱に満ちた人生、酸いも甘いも噛み分けショウビズの世界で生き続けている身体。
この発想。蜷川さんどパンクだわ…てか頭おかしい(賛辞)……と言うか常人には思いつかない。
音楽と言えば、進軍中のフォーティンブラスがハムレットと遭う前のシーンに小室等さんの「夏が終る」(歌詞は谷川俊太郎さん)が使われており、その激烈な美しさにどわーと泣いた。屈託なく笑い、屈託なく進む。何の得にもならぬ小さな土地を、全力で奪う。フォーティンブラスのそんな姿にハムレットは惹かれたのだな、と強く感じ入るシーンでした。何度も観ている『ハムレット』だけど、ここにグッときたのは新しい体験でした。これ2003年版(1回目、2回目)ではどうだったっけ……帰宅後興奮してツイートしたときは初めて聴いたような気がしてたが、藤原ハムレットではどうだったか思い出せない!『ゴンザーゴ殺し』を観て錯乱したクローディアスたちが退場するシーンは2003年も同じ選曲、同じ演出(チャイコフスキー『弦楽セレナーデ』でスローモーション)だったと思うんだけど……。
怖いもの知らずの、幸福で傲慢な若者の姿を美しく描く蜷川さんの手腕はますます冴える。そしてラストシーンが今を映す。最後の演出は、2003年版ではなく2001年版、9.11後のものでした。
川口覚さんは主役を張るだけの華があり、民衆に支持されるハムレット像に説得力を与えていました。小久保寿人さんは、落ち着きのある学者然としたホレイシオを好演。ハムレットとホレイシオの、穏やか乍らもお互いへの厚い信頼を感じさせるシーンはどれも印象的でした。高山皓伍さんと隼太さんのコミカルなロズギルもいいコンビネーション。ポローニアス役、手打隆盛さんは毎回いい仕事をします。土井睦月子さんは深く響く発声とゴージャスな肢体がガートルード役にハマッていた。貫禄ある!鈴木彰紀さんのアンドロジナス的なヌードは、デフォルメされた劇中劇をよりいかがわしいものとして魅せる。声が命とも言えるオフィーリアに、印象的な音を与えた深谷美歩さんもよかった。茂手木桜子さんが怪我で欠場していたのは残念。ネクストシアター以外の蜷川演出作品や他の公演で、顔を見るひとも今後ますます増えるでしょう。
追加オーディションによって加入した新メンバーたちも生きがいい。ロビーには稽古開始時と当日のキャスティング表が掲示されていました。張り出すだけあって当然同じではない。この意味を考える。生き残るのは誰だ。
はああーハイテンションのまま書いたらえらい長文になってしまった。しっかりしたレポート、ステージ画像はこちら↓でどうぞ。
・観劇予報:蜷川&こまどり姉妹『2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」』レビューとインタビュー
02月25日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る