ID:43818
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by kai
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■『南へ』
妻夫木聡さんと蒼井優さんとてもよかったです。妻夫木くんが声を張ると倍音がこもったような音になって、それが妙に憂いを帯びて聴こえる。底抜けに明るい表情と動作で「火山は噴火するぞー」と叫んでも、どこかに不安が感じられる。それが“狼少年”にならざるを得なかった寂しい人物を印象づけるのに効果的だったように思います。『キル』の時指摘されていましたが、ホント堤真一さんの声に似て聴こえる。普段の声はそんなに似ているとは思わないのに。野田さんの作品に出演する女優さんって普段の声色とは違う、所謂「野田さんの好きな声」(=「野田さんの台詞を語る声」としてもいいか)的な独特な声色になることが多いのですが(深津絵里さん然り宮沢りえさん然り)、妻夫木さんはその男優の系譜にあたるのかも知れません。

蒼井さんはその「野田さんの好きな声」の発声ではないのですが、彼女独特の声が“嘘吐きの女”にピッタリに思えました。あのーあれだ、これ説明しても私以外の誰が「ああ!」って言うんだってアレですが、アニメ(ねこのやつ)『銀河鉄道の夜』のザネリの声を思い出すんだよ!「ジョバンニ、らっこの上着が来るよ」ってあれ!(笑)聴きようによってはなんか神経を逆撫でされる声なんですよね。それが後半変わってくる。作り話から真実を伝えようとするもその足許は揺らぎ、誰もその声に耳を傾けようとしない。切迫感溢れる声に聴こえてきました。これはどこ迄意図しているか判らないけどすごいなと思いました。

帝と妃(の巫)から強制送還される人物へと変貌する複雑な役を演じた藤木孝さんと銀粉蝶さん、代々その土地に生き、自然の声に耳を澄まし乍らも自分の生活を貪欲に確保する旅館の女将ミハルを演じた高田聖子さんも素晴らしかったです。

情報量、その交錯がいつにも増して多く、個人的には消化しきれていない部分があります。しかし自分にとって信じること、祈ることとは何かを考える機会になりました。信じることをやめてはいけない。祈ることをやめてはいけない。しかしその祈りが向かう先のことを考えなければ。それが嘘ではないと知っているのは未来だけだとしても。

02月26日(土)
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