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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『センチメンタルな旅 春の旅』、キアズマ珈琲、『ザ・キャラクター』
劇場の環境にも困惑した。音が散るのだ。台詞が聴き取りづらい。この劇場では過去何度も観劇しているが、これだけ音の返りが悪いことに焦燥感を感じたのは初めてだ。野田さんの作品をやるのにこれは厳しい。しかも今後NODA・MAPのホームはここなのだ。来年から芸劇は改修に入るそうだが、この問題点が解消されるといいな……。しかし面白かったのは、古田さんと銀粉蝶さん(復帰されてよかった)の声はハッキリ聴き取れたこと。すごい。それはふたりの役柄にも重要な意味を持つ。いきあたりばったりで、俗の塊で、適当なことだけを言っているのに何故かひとを惹き付け、周りが勝手に動く家元と、誰も耳を貸さない時から必死に叫び続け、命を落とすことによって周囲を動かしたオバチャン。彼らの言葉が届くことはとても大事なことだった。
実際に動くにはいつも遅い、いつも間に合わない。後悔しても何も元には戻らない。ではどうすればいいのだろう。この作品に光明を見出すのは難しい。しかしオバチャンと言う存在があったこと、内ゲバと言ってもいい書道教室の中での出来事の裏にアルゴスとアポローンのやりとりがあったこと、閉鎖的な空間で孤立無援になろうとも声をあげたダプネーがいたことが救いでもあった。
声の通りを除けば、役者陣は皆熱演でした。宮沢さん既に声が嗄れているのが惜しい(『パイパー』では大丈夫だったのに!)、でも背負うものが大きいこの役にはその絞り出す声がドキュメントにすら映った。橋爪さんと哲司さん、池内さんとチョウソンハくんの、一瞬で立場が入れ替わる悲痛さには胸が詰まった。そしていちばん重いシーンを担ったとも言える、美波さん。野田さんの舞台でひとが死ぬシーンは、その苦しさを美しさに変換する演出があることも多いが(それは舞台で見せる、と言う効果を考えると納得出来る)、ダプネーが“変身”させられるシーンはリアル重視でとてもつらかった。男ふたりが細身の女性の自由を奪ってと言う状況もすごくキツかった。このシーンを美波さんは強烈に演じ切った。『エレンディラ』でも思ったけど、このひとホント強いし肝が据わってる。
前にも書いたような記憶があるけど、最近の野田さんのアンサンブルの使い方は、蜷川さんからいい刺激を受けているようにも思う。特に今回のような内容だと、無言の彼らの行動こそに謎が向かう。何故彼らはその場を選んだのか?何故彼らはそのような行動に出たのか?自分の知らないところで集団が大きな事件を引き起こした時、彼らはどこへ行き何を選択するのか?あの場の全てが虚飾ではなかった筈なのだ。教えが全て間違っていた訳でもない。彼らは今どこで何をしているだろう。黒田育世さんの振付けを得たアンサンブルは、集団でありながら個人に興味が行く訴求効果があった。
正直まだ消化しきれない。15年前の春、午前8時9分に起こったことはまだピリピリとした空気を持って思い出される。しかし忘れていっていることも多い。この作品のことを考え、戯曲を読み、当時のことを思い返し続けることで、『ザ・キャラクター』を自分の中で普遍なものにしたいと言う気持ちはある。
07月03日(土)
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