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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■セメント樽の中の手紙
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 葉山嘉樹の「セメント樽の中の手紙」という有名なプロレタリア文学の作品がある。中学校の教科書に載っていたりする。その中にこんな一節がある。セメント樽の中に小さな木箱が入っていて、その中から手紙が出てくるのである。

 ――私はNセメント会社の、セメント袋を縫う女工です。私の恋人は破砕器(クラッシャー)へ石を入れることを仕事にしていました。そして十月の七日の朝、大きな石を入れる時に、その石と一緒に、クラッシャーの中へはまりました。
 仲間の人たちは、助け出そうとしましたけれど、水の中へ溺れるように、石の下へ私の恋人は沈んで行きました。そして、石と恋人の体とは砕け合って、赤い細い石になって、ベルトの上へ落ちました。ベルトは粉砕筒へ入って行きました。そこで鋼鉄の弾丸と一緒になって、こまかく細く、はげしい音に呪いの声を叫びながら、砕かれました。そうして焼かれて、立派にセメントとなりました。
 骨も、肉も、魂も、粉々になりました。私の恋人の一切はセメントになってしまいました。残ったものはこの仕事着のボロばかりです。私は恋人を入れる袋を縫っています。
 私の恋人はセメントになりました。私はその次の日、この手紙を書いて此樽の中へ、そうと仕舞い込みました。
 あなたは労働者ですか、あなたが労働者だったら、私を可哀相かわいそうだと思って、お返事下さい。
 此樽の中のセメントは何に使われましたでしょうか、私はそれが知りとう御座います。
 私の恋人は幾樽のセメントになったでしょうか、そしてどんなに方々へ使われるのでしょうか。あなたは左官屋さんですか、それとも建築屋さんですか。
 私は私の恋人が、劇場の廊下になったり、大きな邸宅の塀になったりするのを見るに忍びません。ですけれどそれをどうして私に止めることができましょう! あなたが、若し労働者だったら、此セメントを、そんな処に使わないで下さい。

 それは自分の恋人が死んでセメントになったことを訴えるせつない手紙だった。オレがこの小説のことを思い出したのは、次の記事を読んだからである。

ハロウィン商品に、中国「労働矯正施設」からのSOS
The Huffington Post | 執筆者: Meredith Bennett-Smith
投稿日: 2013年11月13日 15時56分 JST

アメリカのオレゴン州に住む母親のジュリー・キースさんは2012年10月、近所のスーパー「Kmart」で買ったハロウィンの飾り付けの箱を開けた。中身は安っぽいデザインの飾り付けだったが、その中国製の飾り付けのすき間に手紙が押し込まれているのをキースさんは見つけた。その内容は、キースさんが29ドルで買った「血まみれの墓石」を模した飾り付けよりも、はるかに心をかき乱されるものだった。
「お客様へ。もしこの製品を買われたなら、どうかこの手紙を世界人権機関にお送りください。中国共産党政府の迫害を受けている数千人の人々があなたに感謝し、あなたのことを一生忘れないでしょう」
罫線入りの紙に片言の英語で書かれたこの手紙は、助けを求める悲痛な嘆願で、中国北東部にある強制労働収容所内からこっそり送られたものだった。
キースさんはこの手紙をFacebookで公開し、地元新聞が取り上げるなどして話題になった。そして1年以上経った今、この手紙を書いた本人だと言う男性の匿名インタビューを、CNNが掲載した。
Zhangという苗字で呼ばれるこの47歳の男性は、2008年に開催された北京五輪の数カ月前、中国が活動を禁止している気功集団「法輪功」のメンバーとして警察に拘束され、禁錮2年半の判決を受けた。そして、遼寧省の省都、瀋陽市ちかくにある馬三家労働教養所(Masanjia Labor Camp)に収容されたという。
Zhang氏は、2年間半にのぼる服役中に、SOSの手紙を20通書いた。同氏は、書いた手紙を英語のラベルが貼られた商品の箱の中にしのばせたが、これは、その商品が海外の店舗で売られることを期待してのことだったという。
「手紙のいくつかが海外で発見されることを期待していたが、そのうちあきらめて、手紙のことは忘れてしまっていた」と、Zhang氏は『ニューヨーク・タイムズ』紙に語っている。

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11月15日(金)
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