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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ハメこまれた人たち15(千年の杜)
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ボロ株と呼ばれる一群の銘柄がある。キムラタン(8107)や、ニューディール(4740)、イチヤ(9968)という極端に安い株である。5月2日の終値はキムラタン11円、ニューディールとイチヤがそれぞれ6円という哀れな状況である。これらの企業の株価がなぜこんなに安いかというと、長期間業績が低迷していたり、株券を発行しすぎて一株価値が希薄になったりしているからである。
ボロ株を売買するのは通常は個人投資家である。ただ単に最低投資単位が少ないからという理由でお手軽に参加できるのだが、なぜそんなに安いのかということを考えたときあまり賢明な投資先であるとは言えない。外資や投信などはこういうキワモノには普通は手を出してこない。ある意味純粋にギャンブルを楽しみたい投資家がボロ株に集まっているという見方も可能である。わずかな資金で参加できて、大きなリターン(ほとんどそんな僥倖は起きないが)を期待できる究極のギャンブルがボロ株投資であると言えるかも知れない。そんなボロ株の中のひとつに「千年の杜(1757)」という銘柄があった。
いちおう建設業という看板を掲げてはいるが、給排水管会社を買収して傘下におさめて2006年8月からは純粋持株会社になっている。業績はかなり悪く、子会社の営業有価証券評価損等の原価計上の結果が大赤字で、2007年9月末の時点で11億円の債務超過となっており、なんらかの方法で資本増強しない限り企業としての存続は困難な状況であった。だから株価も低迷を続け、2008年1月17日は19円まで値下がりしたのである。まさかそのボロ株にこんなドラマが待っていようとは誰が想像しただろうか。いや、想像できた人間はいたはずだ。ここから起きるすべてのシナリオを事前に予想して大金を稼いだ人間が存在したのである。証券取引法違反(インサイダー取引)で検挙されるのはいつも小物ばかり。数十億を手にした大物はいつも巧妙に捜査の対象を免れているのだ。ここから発生した千年の杜の大相場を株価操作と呼ばずしてなんと呼ぶのだろうか。
19円を底に徐々に動き出した千年の杜の株価は1月末には100円を突破、半月の間に5倍以上になったのである。その急上昇を見て個人投資家が徐々に群がってきた。そして出来高もどんどんふくらみ始めた。参加者が集まらないと仕手戦は盛り上がらない。ただ、ここで注意しないといけないことはこの「千年の杜」が非貸借銘柄、つまり空売りできない銘柄であったということである。個人投資家はこの仕手戦に参加する方法として、「買い」で参加することしかできなかったのだ。新たな参加者がどんどん高値で買ってくれるので、初期の参加者は利益を確定して売り抜けることができる。しかし、自分が売った値段以上に値上がりすると、また買って再度参加してしまうのである。そうして株価は上昇し続けたのである。
この相場上昇にはちゃんと理由があった。「千年の杜」は2006年12月に20億円分のMSCB(「転換価格(下方)修正条項付き転換社債」)を発行していたのである。その転換価額をできるだけ安くして、そして実際の株価をもっと高くすればその差額が利益になる。2月12日、株価が142円になった時点で大量保有報告書が登場した。澤田地平氏が412万株(9.36%)を保有しているということだった。澤田氏は400万株を借り株で調達し、12万株は市場で平均70円で購入している。またこの時点での大株主はROXANE(1444万株=平均取得額90円)ライズ(479万株・39円)、ユナイテッド(488万株・40.5円+新株予約権111万株)となっている。売り抜けるための準備万端を整えたプレイヤーたちが出揃ったのである。
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05月06日(火)
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