ID:41506
江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■きみは鉄鋼スラグを知ってるか?
 鉄鋼スラグというのは製鉄業の工程の中で発生する産業廃棄物である。発生時の状況から高炉スラグと製鋼スラグの二つに分けられる。高炉で銑鉄を製造する際、溶融された鉄鉱石の鉄以外の成分は、副原料として高炉に投入される石灰石やコークス中の灰分と一緒に高炉スラグとなって分離回収される。こうして生成する高炉スラグは銑鉄1t当たり約290kg生成する。製鋼スラグは転炉で大量の酸素を溶鉄に吹き付けて炭素を除去(酸化精錬)した際に生じた酸化物と精錬材(石灰石など)が溶融して生成したものである。主成分は石灰(CaO)とシリカ(SiO2)であり、当然のことながら水溶時にはPH12程度の強いアルカリ性を示す。

 2006年度の日本の鉄鋼生産高は1億トンを超えていたそうだが、それに比例してこの鉄鋼スラグという廃棄物もまた約3600万トン生成していた。ところがこの廃棄物は、廃棄物扱いではなくて有価物とされている。いちおうグリーン調達品目に指定されており、環境保全に資する材料として認知された「環境にやさしい材料」とされているのである。有価物だからそれが大量に屋外に放置されていても「貯蔵」という扱いになっていて、産業廃棄物処理法の適用を受けないのである。しかし、粉塵となって飛び散れば当然のことながら周辺住民には健康被害をもたらすわけで、オレに言わせれば立派な産業廃棄物なのである。

 以前に石原産業が廃棄物のフェロシルトを土壌改良材などとごまかして大量に不法投棄していた事件があったが、この鉄鋼スラグに関しても同様のことが行われてる可能性が高いのである。しかし製鉄業界というのはかつての日本の基幹産業であり、今でも当然のことながら政治家への影響力が強い。そういうわけで事件として報道された石原産業と違って、こちらは情報が隠蔽されたままであり、そもそも鉄鋼スラグなんてみんな何のことなのかわかっていない。やる気のない腰抜け揃いのマスコミの連中にはまかせておけないのでとりあえずオレが日記に書くのである。

 神鋼スラグ製品株式会社という企業がある。名称から分かるように神戸製鋼の関連会社であり、おそらくは神戸製鋼所で発生した鉄鋼スラグの処理が事業内容なのだろう。そのサイトのTOPにはこのようなことが書かれている。

 鉄鋼スラグは鉄鋼の生産に伴って副生されます。鉄鋼スラグはセメントの代替、海砂等の代替、土木・港湾工事資材として幅広く使用されております。鉄鋼スラグの有する特性を生かし、製品として活用することにより、天然資源、地球環境の保護・保全に寄与しております。是非ご活用ください。神鋼スラグ製品(株)がお力添えいたします。

 大量の石灰を含む鉄鋼スラグがセメントの代替に使われるというのはわかるし、採取が困難になっている海砂の代替として土木・港湾工事資材に用いるというのもわからないこともない。しかし、そんな強アルカリのものを大量に埋め立てに使えば地下水はどうなるんだ。オレはまずそれが気になったのである。このあたりもフェロシルトの時と非常によく似ている。フェロシルトは大量の重金属が含まれてるということで問題になったが、鉄鋼スラグもまた同様に石灰(CaO)とシリカ(SiO2)以外の金属成分を多量に含んでいる。

 もちろん大量の廃棄物をなんとか安全に処理しないといけないことはよくわかる。しかし、それがまるで資源であるかのようなこの説明はかなりの誤解を招く。有効な資源ならちゃんと買い手がつくはずだ。神鋼スラグ製品(株)の損益計算書を見れば2005年度は赤字となっている。どうやらこの廃棄物のリサイクル製品化はなかなかの難事業であることが推測できる。道路用・コンクリート用粗骨材に使用するのなら土中に溶け出して地下水を汚染する心配はなさそうだが、その用途の需要はどの程度あるのだろうか。もしもこれが大変有効な資源であり需要が多いのならなんの問題もなくリサイクルされてるということである。しかし、引き取り手がなくて大量に放置されているという実態があるなら話は別だ。やはりこれは厄介なゴミということになるのだから。


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02月04日(日)
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