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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ハメこまれた人たち7(JAL)
 好評の株式投資日記「ハメこまれた人たち」シリーズはこれで7作目となりました。クリックして過去の作品もぜひお読みになってください。株式入門テキスト「初心者のための株式投資入門」もよろしく。



 6月30日、株主総会を終えた二日後に突然日本航空は2000億円規模の公募増資を行うことを発表した。発行される株は7億株を超えることになる。発行株数の4割近い株式が新規に発行されることで株主価値が希薄化することは言うまでもない。この計画について株主総会の時には全く語られることはなかった。そんな悪いニュースは株主には隠したかったのである。総会のわずか二日後にこれほど重大な、そして株価を下落させる要因であることが発表されることを一般の株主の誰が予想できただろうか。

 ただ、誰も予想できなかったわけでもない。そのニュースが出る直前になぜか日本航空株は400万株を超える新規の空売りがされていたのである。また、モルガンスタンレー証券が6月30日までに約1億株を(おそらく借り株によって)取得していた。この取得に関しては7月12日に大量保有報告書が提出されている。取得から発表までの約10日間のタイムラグを利用してモルガンスタンレーは大量に日本航空株を空売りした可能性が高いのである。

 事前に大量に空売りした誰かも、その後の大幅値下がりを予測して借り株して空売りを仕掛けてきたモルガンスタンレーも、この公募増資に関して何らかの情報を事前に得ていたことは間違いない。インサイダー取引というのはこういうことを言うのである。

 さて、週明けの月曜日である7月3日、日本航空株は寄り付きに大量の売りが出てなかなか値段が付かなかった。結局前日比−20の267円で寄りついた後、少し値を戻して273円でその日の取引を終えた。公募増資=株価の大幅下落と予想した個人投資家たちが寄り付きから大量の空売りをぶつけてきたのである。その日だけで新規に発生した空売りは2000万株近い。その日の出来高は約5000万株だったがそのうちの4割が空売りで発生したのである。しかし、空売りの多くはその日の一番安いところで行われており、寄り付きで成り行きの売り注文(つまり267円)を入れて空売りをした個人投資家たちは、その後のわずかな株価上昇によって全員が含み損になってしまったのだ。空売りによって巨利を得ることができたのは、インサイダー情報を事前に入手して先に空売りを仕掛けた一部の機関投資家とモルガンスタンレーだけで、遅れて情報を入手して売った個人投資家にはもううまみは残っていなかったのだ。

 大量に空売りされたために株不足になり逆日歩が発生した。こうなれば空売りをしている人は一日あたりいくらという決まった貸株料を支払わなければならない。そのせいか日本航空株は下げ止まった。こうなると空売りをした人は苦しくなる。7月5日に発表された逆日歩は週末の三日分を含むために1.65円/株になったのである。空売りをしていた人の中にはあわてて返済して損切りする者も大勢出た。267円で5万株空売りしてしまった場合、280円に値上がりしたことで65万円も含み損になってしまう。そのままどんどん値上がりすれば損失はどこまでも拡大していく。多くの個人投資家がびびってしまったのも仕方がない。踏み上げ相場になることを期待して今度は多くの個人投資家が日本航空株を買い始めた。ただ、抵抗もそこまでだった。7月6日に280円をつけた後は徐々に下がり始め、一週間後の7月14日には株価は256円まで下がったのである。


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07月15日(土)
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