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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ハメこまれた人たち15(千年の杜)
その後「千年の杜」の株価は3度のストップ高をはさんで連日急騰し、なんと2月21日につけた最高値は501円だった。しかし、その日の終値は363円(−80)のストップ安だったのである。急騰時には一日の出来高が1000万株近くふくらんだ。大口の保有者たちはその急騰時におそらく借り株を売却する形で空売りを行ったと推測できる。急騰劇にだまされた個人投資家たちは最高値近くでこのボロ株をつかまされるハメとなった。まさに「ハメ込まれた」のである。
しかし、個人投資家は本当に逃げるチャンスはなかったのだろうか。たとえば2月12日に「千年の杜」は第7回〜第18回新株予約権発行のIRを発表している。発行数は各100個▽新株予約権の目的となる株式=それぞれ1000万円を行使価格で除して得られる最大単元数に新株予約権の発行数を乗じた数の普通株▽発行価格=1個につき各8万1100円▽発行総額=各811万円▽割当先=Top Gear Investment▽払込日=2月27日▽行使期間=2月27日〜2011年2月27日▽当初行使価格=1株につき各135円という内容だ。確かなことは2月27日を過ぎれば135円で転換された株が市場で売却されるわけで、その時点での時価と135円との差額が売却者の利益となるのである。つまり、少なくともこの仕手戦の参加者は2月27日までには撤退する必要があったのだ。
2月15日(金)、株価が高値298円を付けたものの引け際に大量の売り物が出て245円で引けた日があった。このときはそれまで連続三日間、1000万株近い出来高だったのである。オレは週末のこの動きを見て「ここで終わった」と思ったし、上昇相場に参加しなかったことを惜しかったと思ったが、その場合ここで逃げ切れたという自信はなかったのだ。誰もが終わったと思ったその時点で、最後の陥穽が用意されていたのである。それが2月14日付けで発表された 謎のIRである。それはこの「千年の杜」がロシアのソチ市で、黒海沿岸の人工島プロジェクトに参画するという内容だったのである。2014年に予定されている冬季オリンピックの関連施設がそこに建設されるという。ロシアの「有限会社ホマル社」から株式の譲渡を受けてその権利を取得するということがそこには記されていたのである。 これを裏付けるような内容のタス通信の記事も2月15日に出た。IRだけでは信じなかった投資家も、タス通信の記事を見て「本当だったら買い!」と判断したのだろうか。終わったはずのこの株は2月18日から急騰を再開した。18日は283円(+38)で引けたのだが、19日はストップ高の363円、20日もストップ高の443円をつけて、21日の最高値501円に向かって一気に駆け上がったのである。崩れればあとは一気呵成だった。誰が最後にババを引くかのロシアンルーレット状態で株価が上昇し、それが一気にはじけただけのことである。
19円から501円に株価が上昇したということは26倍である。わずか一ヶ月で26倍、まさに常識はずれの動きである。オレは長年株式投資をやってるが、こんな劇的な上昇にはなかなかお目にかかれない。現物株でも26倍、もしも上昇時にどんどん信用取引で買い増しを続けていれば元金を100倍以上に増やすことも可能だったわけだ。しかし、株価がもっとも上昇した時点で信用取引の買い建玉を大量に持っていれば、その後の暴落で破産したことは間違いない。いつその相場が終わるのかは誰にもわからない。2月15日に一度売り抜けて大きな利益を手にした人の中に、その後の上昇を見てあわてて飛び乗って、せっかく手にしていた利益をすべて失っただけではなくさらに大きな損失を出した人もいたはずである。
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05月06日(火)
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