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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ハメこまれた人たち11(東光)
 メリルリンチの大量保有が発表される直前の4月4日、日経金融新聞にはベル・フューズによる東光への経営統合交渉が膠着しているという記事が掲載された。記事の内容は2月に予定されたトップ会談は延期となったこと、4月の話し合いはベル社の方から「都合が合わない」とキャンセルしてきたこと、東光は事業の相乗効果が見込めないと一貫して拒否の姿勢を貫き続けているということなどだった。経営統合するためにはベル社はさらに株を買い進めないといけない。ここにきてベル社にとって新たな障害が発生していた。それはM&A期待で東光株が値上がりしすぎてしまっていたことだったのだ。さらに東光株を買い集めるためには予定よりも多くの費用がかかることになる。東光株を買収に入った時点での株価は平均300円だったのが、今や1.6倍近くに値上がりしているからだ。すでに60%の値上がり益を手に入れたことになる。また、ベル社には過去に海外の同業他社を買収しようとしたが、株価上昇後に売却したという前科もあった。

 4月13日、EDINETでベル・ベンチャーズ・インクが東光株を売却したという情報が開示された。東光株を保有する多くの投資家が危惧していた事態がついに発生したのである。経営統合をあきらめたベル社がついに高値売り抜けをはかってきたのだ。4月11日、12日にそれぞれ約100万株売却していたことが明らかになった。4月10日に瞬間最高風速の501円をつけた株価は一週間後の4月17日には377円まで急落した。その4月17日、ベル社はさらに残りの株の大部分を売却していたことも公表したのである。もしも今回売られた400万株、ベル社の取得平均が300円で売却平均が420円なら120円×400万=4億8000万円の利益を得たことになる。

 東光の株価はその後もジリジリと下げ続け、5月1日にはついに300円まで下がった。上昇前の水準である。ヤフーの株式掲示板には高値づかみしてしまった個人の悲鳴のような書き込みが溢れた。中には「ベル社は高値で利益を確定してからもう一度下がったところで買い増ししてくるはず」と幸福な妄想を書き込む人もいた。そこには大損をした個人投資家たちの怨念と怨嗟の声が吹き荒れていたのである。投資顧問が煽り始めた時の株価は350円以上だ。そのときに参戦した個人投資家で今も東光株をホールドし続けてる者は全員負け組なのである。

 個人投資家にとって撤退するチャンスはちゃんとあった。それはメリルリンチの大量保有と日経金融新聞の情報だ。この時点で見切って売り抜ければ十分に利益を確定できたのである。ところがその後に起きた、おそらくはベル社が売り抜けるために仕組まれた急騰で売るのが惜しくなったのかほとんどの者がホールドを続け、中にはさらに買い増しした者もかなりいたのだ。

 株式投資は常に自己責任である。M&A期待で東光を買った人もちゃんと売り時を見極めれば損をすることはなく短期でかなりの稼ぎになったはずである。しかし、遅れて参戦して暴落に捕まってしまった人はそのままあきらめて損切りするか、数年後にあるかも知れない暴騰を待つしかない。もっとも全く別の材料が出てきて見直しの買いが入らないとも限らないのだが、東光の現時点での経営状況はさほどよいとは言えず、そういう企業だから株価が低位にあり、だからこそM&Aが期待されたのだとも言える。東光株の今回の暴騰・暴落劇は、今流行のM&Aを材料に買うことが持つ危険性を改めて我々に教えてくれたという意味で一つの大きな教訓となったのである。

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05月04日(金)
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