ID:41506
江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■かつて、そこには風呂屋があった・・・
 かつてそこには風呂屋があった。同じ曜日の同じ時間帯には必ず同じ客がいた。風呂上がりにフルーツ牛乳を飲むときには必ず腰に手を当てて直立不動の姿勢で飲むのが作法だった。プラッシーも売られていた。そう、風呂屋に置いてある飲み物はなぜか駄菓子屋に並ぶ飲み物とは違ったのだ。瓶に入ったリンゴジュースも懐かしかった。親と一緒に行ったときは必ず飲み物をねだったものだ。京都に住んでいた学生の時も風呂上がりによくリンゴジュースやプラッシーを飲んだことを思い出す。ブロック崩しのゲーム機もあって、風呂上がりのハダカのままの兄ちゃんがフリチンで遊んでいたことを思い出す。

 かつてそこには風呂屋があった。存在したのは風呂屋だけではなく、そこに集まる多くの人々と、そこにだけ存在する文化があった。入浴時には他の客に迷惑を掛けないようにするためのさまざまな守るべきマナーがあった。風呂屋がなくなるということは、そんなすべてのものが同時に消え去るということである。風呂屋の文化を記憶にとどめるオレたちのような世代が死んでしまえば、もう永遠に失われるということなのだ。

 かつてそこには風呂屋があった。オレは駐車場になってしまったその場所に立ちつくしながら、なぜその風呂屋が廃業する前に一度でも入りに来なかったのかと深く後悔したのである。

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09月19日(火)
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