ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■その扉を開くのは(前編)【鳴門】
 それならむしろ、長らく墓参りをしていない父親に会いに行った、と言われた方がまだ納得だ。ただ、何もあんな体調の時じゃなくても、との疑問は残るが。


 ───そこでカカシは、てっきり自論をぶち上げると思っていた紅が、やけに静かなのに気づき、顔を上げた。

 果たして彼女は、眉をひそめたまま、まっすぐカカシを見つめていた。


「・・・・・・何?」
「ちょっと驚いてるの。まさかカカシから、そんな言葉が聞けるとは思わなかったから」
「そんな言葉?」
「皆が心配するのが分かっているのに、無茶をやらかした、ってくだり」
「・・・・・・言いたいことがあるんだったら、言えばいいじゃない、この際」


 何か含むことがある表情を向けられ、カカシはいらだたしげにそう返す。
 すると紅は、そうね、と呟いてから、同僚の要望に応えた。


「さっきの言葉、そのまんまあんたに返してあげるわ、カカシ」
「え」
「少なくとも暗部時代のあんたは、あたしたち・・・あたしやアスマやガイの心配をよそに、結構・・・じゃないわね、相当、やり過ぎなんじゃないかってくらい、無茶やらかしてたわ。正直あたしは、あんたが死に急いでるんじゃないか、って思ってた」


 責める口調ではない。むしろ、昔を懐かしむように言われたからか、カカシの脳裏にいきなり、暗部時代の光景が蘇る。


「・・・ゴメン。
今更こんなこと言えた義理じゃないけど、紅たちが心配してくれてるのは、分かってた」
「あのね、カカシ。あたしたちだって、あんたが世間で言われるような冷血じゃないことぐらい、知ってたわよ。でもね、あたしたちの気持ちがちゃんと届いてるよ、ってあんたが反応示してくれなきゃ、そんなの、届いてないと同じなの。
・・・今のガイみたいに、ね」


 すい、と顔をそむけた紅の視線の延長上にあるのは、おそらくはガイが寝かされている病室。


「心配してたのに、あんたが知らん顔し続けるから、そのうちあたしも気持ちが折れちゃって。どうしようもない、って諦めちゃったっけ」
「・・・・・・」
「けど、あいつは、ガイは違ったわよね。こっちがあきれ返るほど、あんたのこと執拗に追い回してたから。何だかんだ言いながら、あんたもガイには向き合ってたから、内心ホッとしたのよ」
「いい加減な受け答えしようもんなら、もっとこじれるからね、ガイの場合」


 そう。どんなに冷たくあしらおうが、突き放そうが、あの暑苦しいまでの執念で噛り付き、何らかの返事をもらうまで決して引き下がらなかった。


『カカシ、勝負だ!!』


 そんな言葉と共に───。


「・・・まあ、あんたもこうやってガイに袖にされてることで、あの頃のあたしたちのもどかしさが、少しは分かったでしょ?」


 ちょっとだけ鼻声となった紅の呟きに、カカシは再び現実の世界へと戻ってくる。


「それが分かったんなら、これからせいぜい素直にしてよね? それこそ、ガイが気持ち悪がるぐらいにさ。あたしそれを見て、あんたたちをいい笑いものにするの、楽しみにしてるんだから」


 言いたいことが言えてすっきりしたのだろう。紅は先ほどとは打って変わって晴れやかな表情で、カカシに笑いかけてきた。

 だが、カカシの、冷静な忍としてのの頭脳が、今の話を前向きには解釈できずにいる。


「・・・そう、出来ればいいのは山々なんだけどね。そんな悠長なこと言っていられる時間が、果たしてガイに残ってるのかな・・・?」
「え・・・?」


 カカシの危惧は翌日、火影がわざわざ病室へ訪ねてきたことで、的中することとなる。

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「忙しいところを呼び出してすまない。リー。テンテン」


 その日。
 火影が来るのと前後して、第3班のリーとテンテンも、カカシの病室へ押しかけた。どうやら火影が2人を呼び出したらしい。


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10月06日(月)
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