ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■春の香は碧 【鳴門】 前編
 実は別所にも投稿してあるんですが、こちらにも。いーかげん更新しないと、投稿できなくなるかもしれないし。

 以前UPした「夏の色」及び「いっしょにごはんを食べようか」と、時間枠は一緒と思ってください。ただ、【鳴門】完結後に発表された公式小説の設定を一部使っているので、おそらく色々と矛盾があります。大目に見てください。m(__)m

※一応、念のため。
作中で引用している文章は、清少納言の「枕草子」の一文です。「枕草子」には著作権は発生しませんので、本文の引用自体は著作権違反ではありません。

※タイトルを「はるのかはあお」と読むか、「はるのかはみどり」と読むかは、読者次第です。「木ノ葉の気高き碧い猛獣」なんだから「あお」なのかも知れませんが、言葉的には「みどり」でもいいな、と思ってしまったもので・・・優柔不断でゴメン★

※久々に、長すぎました。前後編になります。

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春の香は碧


 木ノ葉の上層部に命じられ、某国へ逃れようとした抜け忍を『処理』し。

 少しチャクラを消耗した はたけカカシが、開(ひら)けた草むらで大の字になって休憩している時に、それは漂ってきたのだ。
 その、どこか懐かしく感じられる、青い香りが。

 体を起こすのも億劫で、横たわったまま視線を右へずらせば。
 そこにあったのはまだ蕾が開ききっていない、フキノトウの群生。


 ───そうか。もうこんな季節だったんだな・・・。


 ふと、同期で自称・ライバル、マイト・ガイの明るい笑顔が脳裏に蘇り、カカシは静かに目を閉じた。





 確かあれは1年前のこと。
 いつも通っている飯屋が臨時休業で、カカシがすきっ腹を抱えて夜の街を歩いていた時に、ちょうど任務明けだと言うガイに出くわした。


「空腹中に勝負しても、そんなのホントの勝負じゃないデショ?」


 相も変わらずけしかけられる恒例行事を、そう言ってかわし。ほとんど話のついでに聞いたのだ。どこか良い雰囲気の食堂はないか、と。
 すると、やはり今晩は外食予定だったガイから、有力情報が与えられたのだ。


「だったら、今から俺の行きつけの居酒屋へ一緒にどうだ? ご馳走と言うほどのものは出さないが、馴染める店だぞ」


 空腹に耐えかね、そう誘われるままについて行ったカカシだったが、店の暖簾をくぐったところで我に返る。
 ガイの行きつけなのだから、彼のような血の気の多い男たちばかりが、集う場所なのではないのか?


 ───疲れてる時に、熱血はゴメンなんだけど。


 カカシは若干及び腰になったが、そこそこ繁盛している店らしくカウンターしか席は残っておらず、渋々座ったそこで、店の主に引き合わせられた。


 元・忍だと言う店主は、自分たちとそう変わらない齢で、浅黒く日に焼けた男のくせに、わざとらしい女言葉を使う人物だった。何でも、特にソッチの気があるわけではないのだが、柔らかいこの口調の方が変にトラブルを招かなくて、便利らしい。

 とりあえず食べられるものを。
 いくつか料理を頼んで一息ついた頃、そう言えば、と、その店主がガイに話しかけた。


「ねえねえガイちゃん、もう春でしょ? 材料揃えてあるから、例のもの作ってくれなあい?」
「・・・例のもの?」
「またか? いい加減、作り方覚えたらどうなんだ。教えただろう」
「でもお、やっぱりガイちゃんの作ったものの方が、評判イイんだってばあ。アタシが作っても、どこか味が違うのよ。ね? 今晩もビール1杯、お礼に奢っちゃうし。そっちのお兄さんの分も、サービスするわよおん」
「何かよく分かんないけど、ガイくーん、俺にビール奢ってv」
「カカシ、お前な・・・。しょうがない、今日だけだぞ?」
「とか何とか言っても、毎年1回は作ってくれるんだから。すっかりウチの風物詩よねえ」
「勝手に決めるな。ったく、今度はバイト料とってやろうか・・・」



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04月15日(水)
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