ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■snow snow snow(BL■ACH コンBD)
 コンは、ルキアに自分の生まれたのがどんな日だったか、聞いてみたかったのかもしれない。もちろん、一緒に雪景色を見たかった、一緒に誕生日を祝いたかった、と言うのもあるだろうが。
 生まれた場所がどんなところだったか。生まれた日がどんな日だったか。知りたい気持ちを止めることは、誰にも出来ないだろう。

 俺が、自分の無力さを思い知るのは、こんな時だ。どんな言葉をかけてやれば良いのか、あいにく何も見当つきやしない。せめて、物思いにふけるのを邪魔しない程度に、見守っているぐらいで。

「もうすぐ・・・やんじまうな、雪」
「・・・ああ」
「誰も気づかないうちに降って、いつの間にか消えちまうんだな、雪って。何か、寂しいもんだな」
「・・・・・」

 コンの言うとおり、降る雪は次第に勢いを失い、チラチラと舞い散るだけになっている。そしてちょうどこの雪がやむのは、コンの誕生日も終わる頃だろう。夜が明ければ、溶けてしまうかも知れない───降っていた名残すら、ないままに。

 そうやって、最後の一片が舞い落ちて来た───ちょうどその時。

 ヒラリ。

 この白き世界ではやけに目立つ、そして決してありえないものが、目の端に映る。

 そう。本来だったらこんな冬に、黒アゲハチョウなんて飛んでるどころか、生きているはずもない。
 だからこいつは、この黒い蝶は、尸魂界から現世へと死神を導く地獄蝶のはずで。

「コン・・・」
「分かったって一護。そろそろ部屋へ・・・」

 俺の声に答え、戻ろう、とこちらを振り返ったコンの目が、大きく見開かれる。

「遅くなって済まん。何とか間に合ったか?」
「ルキア?」
「姐さん!?」
「コン、今日が誕生日なのだそうだな・・・おめでとう」

 白一面の中、黒い死覇装を身につけた黒髪の死神・朽木ルキアが、微笑を湛えて立っていた。

「ね、ねえさああああんっっ!! 会いたかったっスうううううっ!」

 げしげしっ☆

「おお済まぬ、いつものくせで」
「俺の体で抱きつくな。ってか、泣くな」
「ま、まさかダブルで足蹴が来るとは予想外・・・☆」

 俺とルキアからの『攻撃』に撃退はされたものの、コンはさすがに嬉しそうだ。

「けど、何で姐さんがここに? 俺の誕生日なんて教えてなかったのに」
「今日夜一殿から聞いたのだ」
「夜一さんから?」
「久しぶりに尸魂界へ来ておられたらしくてな。運良く流魂街に私が出たところで遭遇して、そこで聞いたのだ」

 俺の部屋へと急ぐ道すがら、現世へ来た経緯を説明するルキア。それを歓迎するがごとく、再び空に白いものが舞う。

「全く、水臭いではないか。それならそうと事前に話してくれたら、時間ぐらいとるものを」
「ほらみろ、俺の言ったとおりだろうがよ」
「イヤ、まあその・・・それはもうイイっしょ? とにかく、わざわざ来てくれて、俺嬉しいっスv」
「あいにく急だったから、そんなに長く滞在できるわけではないがな。茶飲み話をするくらいの時間は、あるぞ」
「イイっスね、それ。後はお菓子の1つでも・・・って、そうだ一護! さっきやったチ■ルチョコ返せよ」
「やなこった。もう食っちまったぜ」
「何をモメておるのだ、たわけども。早く部屋に入ろうではないか。喉が乾いた」

 たわいない会話を交わしながら、俺たちは俺の部屋へと戻って行く。いつものように。

 さあ───お前の生まれた日の話をしよう。


≪終≫

      **********

※良く考えたら、原作での経過時間って半年かかってないんですよねえ? つまり、一護はともかくも、ルキアもコンもまだ誕生日を迎えてない、ってことで。
 だから、こういう話もアリかな、と思って書いてみました。きっと似たような話書く人、いそうですけどね(^^;;;)一護もルキアも、勿論織姫も恋次たちも、みんな無事でコンたち現世組のもとへ帰って来いよー。


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12月30日(火)
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