ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■いつか来たる結末、されど遠い未来であれ(4)
「もっともその実験、と言うのがたまたま、壊れかけた改造魂魄にコーティングを施して延命させる、って前代未聞の代物だった、ってだけでしてv」
「・・・モノは言いようだな・・・」
「ちょっと待て。その実験の本当の目的、きちんとコンに話してあるんだろうな?」

 事情が事情とは言え、いくら何でも人体実験すると思い込んだまま、ってのはあまりにマズいだろうが。

 どうにもその辺が気になって尋ねたが、さすがに浦原さんは抜かりはねえ。

「勿論ですよ。後で『この世に未練はなかったのに余計なことを』なーんて恨まれても困るっスから、コーティング液につける直前に、ちゃんと説明しました。ただし、成功率は五分五分っスから、あんまり期待ないで下さいね、って付け加えときましたけど」
「「をい【怒・始解】」」
「嘘ですって。本当の成功率は、まあ99.9%と言ったところでしょう。
・・・ま、人の気も知らず、勝手に重荷気取りで勝手に人生の幕を下ろそうとしたやんちゃ坊主に、せめてもの嫌がらせ、ってことで勘弁してくださいな」

 その呟きに、俺は思わず浦原さんを見やる。

 彼はまだ少し、怒っているみたいだった。コンの窮地に気づいてやれず、もう少しで死なせるところだった俺へ、の憤りかも知れない。
 そして、周囲の心配をよそに、独りよがりな行動をとりやがった改造魂魄へ、も、むろん。

 俺の視線に気づいたのか、浦原さんは少し疲れたように笑って、付け加えた。

「・・・アタシはね、黒崎さん。彼にはもう、不幸な死に方はして欲しくないんですよ。かつてコンさんの仲間たちに、一方的に理不尽な死を強いた立場の1人として、ね」

 もっともこんなの、単なる自己満足、エゴかも知れませんけど。
 元技術開発局々長だった男のその言葉に、俺とルキアはいつしか、お互いの顔を見合わせて苦笑いをかわしたのだった。

      ***************

 ルキアと、そしてぬいぐるみに注入されたコンと共に、俺が自分の部屋へ戻ってきたのは、ギリギリ門限前。
 夜はとっぷりくれ、階下から聞こえる遊子や夏梨たちの声に、旨そうな食事の香り。いつもどおりの日常が、ここでは息づいている。

「・・・まだ寝てンのか、コンの奴」
「ああ。随分楽しそうな寝言を言っておるぞ」
「ったく・・・ノンキに眠りこけやがって」

 ゆったりとベッドの上へ横たえられたぬいぐるみは、時折むにゃむにゃと何かを呟きながら寝返りを打っていて、その寝顔は安らかだ。・・・さっきまでのことがあるから尚更、そう見えるのかも知れねえけどな。

 とりあえず自分の体に戻り、ようやく訪れた安心感に伸びなんぞしていると、コンの横に座り込んでいたルキアに声をかけられた。

「なあ、一護。いきなり訪ねておいて済まぬが、今晩はここに泊めてもらえぬか?」
「押入れに? そりゃ俺は構わねえけど・・・尸魂界の方は大丈夫なのかよ」
「問題ない。明日まで休暇をとってあるから。それに・・・」

 ルキアの手は、コンの毛並みを確かめるように優しく撫でている。

「目が覚めたこやつのそばに、いてやりたいのだ。お前はちゃんと生きているぞ、一人などではないのだぞ、と。・・・いらぬことを吹き込んだから、謝りたくもあるしな」
「謝る、なあ・・・お互い様なんじゃねえの?」

 俺が半ば憤然と呟くと、ルキアがキョトン、とした顔を俺に向ける。

「・・・何だ一護、貴様は謝らぬのか?」
「ぜってー謝んねえ」
「一護・・・いくら何でも、それは冷たいのではないのか?」
「知らねーよ、ンなこと。浦原さんも言ってたろうが。勝手にてめーのこと重荷扱いして、一人で勝手な行動しようとした馬鹿に、頭なんか下げるかってんだ。
俺は荷物持ちじゃねえっての。あいつのことは図々しい居候だとは思っても、お荷物だの重荷だのと考えたことすらねえんだ。なのに、メンドくせえ早合点しやがって。
大体、一緒に住んでる俺より、何であんなうさんくせえ下駄帽子の方を頼りにすんだよ。まずは俺に相談だけでも、とも思わなかったってのが、断然気に食わねえ」


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12月04日(木)
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