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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■3月半ば(モン◎ーターン)
「おおーっ、波多野ーーっvv 久しぶりじゃのお、会いたかったぞーーvv」


 今年初めてのSGの前検日。
 蒲生は数ヶ月ぶりに会う波多野憲二に、親愛と歓迎の意味合いでガシッ! とばかりに抱きついた。
 彼らの後ろでは、香川支部の後輩や東京支部の浜岡が、呆れた顔をしている。


「あ・・・相変わらずっスね、蒲生さん」


 クスクス、と失笑が漏れ、波多野はそうコメントを返すしかない。
 周囲を気にする波多野に対し、人目などまるで気にしない蒲生。この取り合わせでの『ご挨拶』は、ほぼSGごとの名物と化しているらしい。

 香川の蒲生にしてみれば賞金王決定戦が終われば、関東の強豪選手である波多野とは、総理大臣杯の時期にまでならないと会えない。だからこその歓迎ぶりなのだが。

 実は今年の総理大臣杯は、波多野の地元・平和島だったりする。こちらが出迎える格好のはずが、こうも熱烈歓迎ぶりを示されると、波多野としても面食らうのも無理はない。
 まさかこちらから抱き返すと言うのも、何だし。


「だけど、何で毎回毎回俺相手ばっかにハグなんですか? 同期の人とか、榎木さんとか、香川支部・・・はしょっちゅう顔合わせてるし今更だけど・・・とにかく。もっと親しい人、いるでしょうに」
「イヤ、新人時代は榎木相手にもしとったんやけどな」
「してたんですか☆」


 少々呆れ気味の波多野に、背後から苦笑交じりの声がかかる。


「私は山口で、蒲生さんは香川だろう? 地理的に近いから、新人時代はそれなりの間隔で一般戦がかち合ってたんだよ」
「榎木さん! お、おはようございます」
「おはようございます。・・・じゃあ、その度に抱きつかれてた、ってことですか?」
「まあ、そういうことになるかな」


 波多野と一緒にいた浜岡に問われ、榎木祐介は笑いをかみ殺すようにして答えた。
 蒲生は、と言えば、先輩ならではの大らかな挨拶を、昔馴染みの後輩に返す。


「ホンマ、あの頃の榎木は純情やったからなー。抱きつくたびに悲鳴上げて、おもろかったんやけど」
「ああも頻繁に抱きつかれたら、誰だっていい加減慣れますよ」
「慣れるくらいに抱きついてたんですか☆」
「そやかて、女子選手に抱きついたらセクハラになるやないかー」
「論点ズレてるって☆」


 波多野と笑い、榎木と話し、香川支部の後輩にたしなめられ。
 そうするうちに、蒲生は自分の周りに人が集まってくる実感を覚えるのだった。


 今年もまた、総理大臣杯が始まる。


《終》

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※良く考えたら、前検日の話なんだから、昨日のうちにUPしとくべきだったのかも。あう☆

03月16日(木)
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