ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
[62062hit]
■その扉を開くのは(前編)【鳴門】
ガイが元気なら、前向きな性格そのままに『そんなことはない!!』と断固否定しただろう。
が、当の本人は未だに意識が戻らない。そう、本当に現実逃避をしているかのごとく。
───これではまるっきり、話に聞いた『無限月読』だ。
幸せな夢ばかりを見せられて、いつまでもその世界が続けばと願い、ずっと閉じこもっているようで・・・。
もしそうなのなら、今頃ガイはどんな夢を見ているのだろう。
カカシが見る限り、ガイはいつも意欲的で、彼曰くところの『青春』を謳歌していたはずだ。だから逆に、彼にとっての『繰り返し味わいたい幸せな夢』が何なのか、全く思い当たらない。
むろん、長い忍人生の間、苦汁を舐めたことも数え切れないはず。だが、少なくとも任務以外の時には、辛そうな姿など見せたことがなかった。ある意味、強がりの格好付けだから。
・・・いや。
そういえば、彼らしからぬ表情を浮かべていたことが、ほんの一時期だけカカシにも、覚えがある。
あれは忘れもしない、ガイの父親・ダイが亡くなった頃だった・・・。
------------------------
「ねえ、カカシ。まだガイの奴、目を覚まさないの?」
翌日。
赤ん坊の定期診察のついでにと、カカシの元を訪れた同僚の夕日紅が開口一番、そう聞いて来た。
あまりの不躾さに、返す言葉も自然、棘のあるものとなる。
「・・・あのね。何いきなり、本題に入ってくるの、紅。あのナルトでさえ、一応は俺の体調心配してから、聞く気配りあるんだよ?」
「あんたの体調なんて、見れば分かるじゃない。口が利けるし・・・それも図々しい口が。体も起こせるし。悪いけど、元気そのもののあんたの心配してる暇なんてないわ」
「あ、そ」
彼女の長所は、失礼ながら女性らしからぬサバサバしたところだと、カカシは思っている。今回もそれは有効なのか、単刀直入に疑問をぶつけたようで。
さすがに彼女の前では、カカシも漏れるため息を隠すこともせず、答えることにした。
「今のところ、その兆しはないみたいだね。
俺もあれから会えてないから、詳しくは知らないんだけど」
実は、ガイがこの病院に担ぎ込まれてから、諸事情により面会謝絶になっている。どころか、彼が意識不明になっていること自体、伏せられている状況だ。
もっとも、既に身内がこの世にいない身なので、例外的にガイ班の生徒たちは会うのを許されている。
時々カカシは、廊下で彼らとすれ違うことがあるが、表情から察するに経過はよろしくないらしい。
「あたしはあいにく、倒れてからのあいつの顔を見てないんだけど・・・そんなにひどい怪我なわけ?」
「・・・少なくとも、あんまり思い出したくないくらいに、ひどいよ。
何なら、あいつのチャクラが尽きかけた時の状況、懇切丁寧に実況しようか?」
「やめて。気を悪くさせたのなら謝るから、八つ当たりしないでよ」
ひどいおじさんよね〜、お母さんいじめるんだから〜。
そう、腕の中の赤ん坊につぶやくことで、紅はカカシの怒気をそぐ。
「・・・ゴメン、カカシ。けど、体力バカで健康優良児そのもののあいつがベッドから起き上がれないなんて、全然実感沸かないの。だから、つい」
「だろうね。けど事実だよ。
あいつはマダラ相手に体術一本で向かって行ったから、その反動も直接的だったのは仕方ないってところさ。それは分かる」
そこでカカシは一旦、遠慮の欠片もなく長嘆息をついて俯いた。
「・・・俺が分からないのは、皆が心配するのが分かっているのに、あいつはどうしてあの体に鞭打っていなくなる、なんて無茶をやらかしたか・・・だよ」
火影はああ言ったが、正直なところカカシは彼女の説には否定的だ。
ガイは叩き上げなだけあって、人の生き死に、戦力の有効無効については恐ろしくシビアなのだから。たとえ自分に対しても、もし忍としての寿命が尽きたと知れば、きちんと受け入れるに違いなく。
[5]続きを読む
10月06日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る