ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■みんなでごはんを食べようか 前編【鳴門】
「・・・。さすがに今晩は、お前は来ないと思っていたからな。残りのカレーは冷凍保存するつもりだったんだ。温め直してやるが、少し時間がかかる。おとなしく待っていろ」
「うん、よろしく〜v」


 もはや諦めがついたのか、苦笑しつつ台所へ姿を消すガイ。無論その手には、持ち込まれた新鮮な卵を持って。
 何とか夕食にありつけると安心したらしく、カカシが気の抜けた風体でボソリ、呟いたのは。


「だってさー、ガイのカレーって辛いけど、平和の象徴って感じじゃない。
あれ食べないと、木ノ葉に無事帰って来た気がしないよー」




 ───ネジにも覚えがある。

 上忍となってから初めて、ガイ班を離れ他の上忍と特別任務に出た時の話だ。小競り合いが少し長引いて、こちらが不利な状態になり、森の中で一時的に身を潜めざるをえなかったことがあった。
 気配を徹底的に消し、敵が油断するのをただひたすら、少しの恐怖感と共に待っていた時・・・スパイシーなガイのカレーを食べたのが随分前でよかった、と、不意に思ったのである。もし昨日にでも食べていたら、呼気や何かで即座に居場所を突きとめられていただろう、と。

 無論それは、お門違いの八つ当たりだ。ガイは部下の身を案じ、わざわざ里内の任務ばかりの期間を見計らって、ご馳走してくれたのだから。

 自らの考えの理不尽さを、即座に心の中で詫びたネジは、次いでこう、願った。


 ───この重要任務が無事終わったら、またガイのカレーが食べてみたい、かも。


 ガイにお手製カレーをおごってもらう、と言うことは、その前後に危険な任務がない証拠。だから、その安息の日を祈って・・・・・。


 結局、その特別任務は何とか無事に成し遂げ、ネジは木ノ葉に戻ることが出来た。
 そして、たまたま向こうも他の任務を終えたばかりらしく、ちょうどガイが帰ってくるところに出くわしたのだ。

 どうやらガイは、ネジが結構危ない目に遭っていた事を知っていたようで、「無事でよかったな」と肩を叩いてくれた。「これでお前も、名実共に上忍だ」とも。
 その声を聞いた途端。


 ───ああ、本当に帰って来ることが出来たんだ───。


 じんわり目の辺りが熱くなり、視界が若干ぼやけて見えたのは───絶対ガイには内緒である。





 この、自分たちよりはるかにベテランの男も、そんな風に感じたことがあるのだろうか。

 妙な共感を覚え、ついまじまじと見つめていたネジに気づいたらしく。
 カカシは一瞬驚いた顔を見せた後、不意にいたずらっぽい目を瞬かせた。


「それにしても、まさかネジ君までガイのカレーパーティに付き合ってるとは思わなかったな。あいつのカレー、マジで辛いデショ?」
「・・・最初の時文句を言った。ちゃんと次から、味を調節してもらっている」
「そうそう。生卵を入れる、って思いつかなかったら、食べられなかったわよねーアレ」
「そうですか? ヒリヒリはするけど、美味しかったですよ?」
「リー・・・お前確かあの時、これも修行だとか言ってなかったか?」
「あ、あれは、その、言葉のあやって言うか・・・」


 いつの間にか会話に割り込んできた中忍2人の不躾さを、怒りもせず。
 何だかんだでなじんでいる彼らの雰囲気に、カカシは思わず吹き出していた。

 もちろん、気まずさいっぱいで睨み返すネジに、手を振って宥めるのも忘れない。


「ゴメンゴメン。ちょっとネジ君たちが羨ましくてね。俺が辛い過ぎるだの何だの言っても、全然気遣ってなんかもらえなかったからさー」


 カカシの言い分に、リーが「え、ホントですか?」と驚きの相槌を打つ。


「ホントだよ。ちょっと辛すぎるんじゃないか、って文句言ったのに、ガイのヤツ開き直ってさあ。『ちょっとのカレーで、たくさんご飯を食べられるから経済的なんだ!』って。気持ちは分かるけどねえ」


 随分強引な上司の主張が、どんな表情と共に繰り出されたか目に浮かぶようだ。



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08月02日(土)
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