ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■みんなでごはんを食べようか 後編【鳴門】
ガイ班+カカシ ネジ視点


※うっかりしてましたが、以前書いた「追憶」とは若干設定が違っています。それぞれが独立した世界観だと思ってください。

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「子供の頃、ちょっと不義理しちゃってたから。
それにカレーって、出来たら大勢でワイワイ食べた方が、楽しいじゃない」


 含みのある発言は、一瞬でリーたちの口を噤ませた。
 台所でカレーを温めているガイの、カチャカチャという食器の音だけが聞こえて来る。

 皆、目と目でせっつくクセに、誰も事情を聞く勇気が出ない。それを察し、あえて明るい声でカカシは口火を切った。


「・・・みんな、ガイの親父さんのこと、聞いてる?」
「え、ええ、まあ・・・」
「随分前に亡くなった、ってことだけは、以前に・・・でもそれ以上はちょっと」
「カカシ先生は面識があったのか?」
「あったよ。・・・まあ、想像はつくだろうけど、ガイをもーっと濃くしたような人でね」


 ───あのガイより、濃い人間がいたのか。


 声にならないつぶやきが聞こえたかのように、カカシの言葉はクスクス混じりだ。


「イヤ、ガイの親父さんが濃かったから、息子もああなった、って感じだよ。
でね、彼はガイとは違って、死ぬまで中忍にはなれなかった。いわゆる万年下忍、ってヤツ。
でも下忍って、ま、リー君たちもついこの間まではそうだったろうけど、稼ぎはあんまり良くなくって。独身とか、共稼ぎってならともかく、子供を養って行くにはケッコー厳しい環境なワケ」


 ガイがカレーに抱く思い───それが何となく分かり始めたネジたちに、頷いて見せるカカシ。


「そういう事だよ。カレーは冷凍させておけば保存が利くし、ちょっとぐらいはしなびた野菜を入れても、少し古いお米にかけても、それなりに美味しく出来て経済的デショ? 野菜もたくさんとれるしね。
だから、親父さんから受け継いだガイのカレーって、陳腐な言い方をすれば、出来うる限りせめてもの精一杯の愛情の味、ってこと」


 ま、あれだけ凝った上に辛くなったのは、単にあいつの趣味だろうけど、と付け加えて。


「何が俺の趣味だって?」


 ちょうどそこへガイが、カカシの分のカレー皿を持って現れた。


「サンキューv 
イヤ、お前のカレーが辛いのは、お前の凝り性のせいだろう、って話してたの。
だって、お前の親父さんが作ってくれたのって、そこまで辛くなかったデショ?」
「そうだったか?」
「そうだよー。・・・じゃ、いただきまーす」


 カカシは受け取った皿に早速スプーンを差し入れ、生卵をカレーと混ぜてから食べ始める。


「うわ、やっぱりちょっと辛い」
「文句を言うなら食うな」
「食べられないとまでは言ってないでしょ、返してよー」


 頭上でカレー皿がやり取りされるさまは、はっきり言って上忍同士のものと言うにはあまりにもおとなげない。
 そのうち、カカシが何とかカレーを取り戻し、再び食べながらあれこれと主張し始めた。



「・・・だってさ、俺が親父さんのカレー食べたの2回だけだったけど、ここまで辛くなかった覚えあるよ。ガイってば絶対、自分好みの辛さに慣れすぎて、親父さんの味おぼろげになってるんじゃないのー?」


 父親の味を忘れた、とまでは言わない辺り、ガイへのさりげない気遣いを感じるネジである。


「うーん、言われてみれば、材料も子供の頃よりいいものを使ってる、か。それに香辛料も最近は、色々なものが手に入るようになったから、つい試してみたくなるしな」
「・・・ちょっと。俺たちを実験台にしないでくれる?」


 そう文句をたれながらも、カカシはいつの間にか皿の中身を全部平らげていた。そしてそのまま空の器をガイに押し付け、無言のうちにお代わりを要求する。
 苦笑いのままそれを受け取ったガイは、部下たちの皿を一通り見て尋ねてくる。


「お前らは? お代わりはいるか?」
「僕はもうおなかいっぱいです」

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08月03日(日)
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