ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■snow snow snow(BL■ACH コンBD)
「たださ。時間があるんだったら、運がよかったら、って俺が勝手に思ってただけ。そういう意味では俺、運が悪いんだろうなー。生き延びたのは幸運だったけど。欲張るなってことなのかも。
ってかさ、年明ける前に処分しちまおう、って、いかにも在庫整理って感じだよなー。棚卸(たなおろし)かっつーの」
降る雪に紛れさせるかのごとく、つとめて明るく愚痴るコンの背中に、俺は静かに語りかけた。
「コン」
「んー?」
「とりあえず間に合ったから、言っとく。・・・誕生日、おめでとさん」
「・・・・・」
コンはほんの少しだけ、見開いた目で俺を見たけれど。
「あーあ、言われたからには仕方ねえなあ」
そう言いつつ、フード付きジャンパーのポケットに手を突っ込み、ポイッ、と小さな物を投げて寄越す。とっさのことで、俺はそいつを落としかけながらも、何とか手のひらで受け止めた。
「うわっとと☆ ・・・何だよ、これ」
「チ■ルチョコ。浦原ンところで買ったんだ。ほら、誕生日は周りの人間に感謝する日だ、ってテレビで言ってたじゃん。だから、もし姐さんが来たら渡そうと思って」
───処分されるところを引き取ってくれて、有難う───。
「もっとも、もう間に合いそうにないからさ、代理に一護が受け取れよ? ま、あれだ、おめでとうって言ってくれたから、とりあえず感謝の印として、だ」
「随分小せえ感謝の印だな・・・」
「し、仕方ねえだろ、金ないんだから。いらないんだったら返せよ!」
「・・・もらっとく。チョコは好きだし」
懐にしまいながら、ふと俺はこいつの購入元のことに思いをはせる。
「ひょっとしてお前、浦原さんにもこれ、渡したのか?」
「あー、うん。『何で今更処分決定日なんか知りたいんだ』って聞かれたからさ、説明したら『アタシが言うのも何ですが、誕生日おめでとうございます』って言われて。
・・・そう言えば夜一さんにも、テッサイにも渡したな。お祝い言われたから」
「メチャクチャ複雑そうな顔、してただろ。特に浦原さん辺りは」
「言われてみればそうだったような・・・。やっぱり、自分ンところで扱ってる商品で代用しちゃ、マズかったか?」
「別にいいんじゃねえの」
俺はそうとしか言わなかったけど、浦原さんの気持ちを察して、苦笑した。
だって浦原さんにしてみれば、処分決定日を聞かれるって事でコンに、仲間の死を責められてるような気分になったんだろうと思う。なのに一転して、感謝の印とやらを渡されたんだから、相当困惑したんじゃねえだろうか。コン自身がそう意図したかどうかは、疑問だし。
もちろん、コンがこうして生き長らえてるのは、あの人が強行に回収しようとしなかったお陰もあるんだから、感謝すること自体はアリだろう、多分。
静かな夜だ。
先ほどから雪は降り続けているが、風で邪魔されたりせずほのかにコンの───正確には俺の───肩に、髪に、降り積もる。
それを時々手で払いながらコンが見上げるは、雪の生まれる遥か上空。
「・・・なあ、尸魂界も雪って降るのか?」
「あいにく知らねえな。俺があっちへ行ったのは、冬じゃねえし」
「やっぱり寒いんだろうなー。草履履きなんだろ?」
「かもな。防寒具ぐらいはあるんだろうけど」
ところで俺にはコンとの会話で、不意に閃いたものがある。
「・・・コン、お前、尸魂界に帰りたいのか?」
もっともその疑問は、半ば憤然と否定されてしまうが。
「俺が? 尸魂界に? ンなわけねえだろ、向こうに俺のいる場所なんかねえんだし、下手すりゃ回収されて、命が危ねえんだぜ?」
ただ。
「俺が作られた日ってのがどんなんだか、知りたかったんだ。・・・それだけの話」
「・・・・・」
そう言えば、先日見た例のテレビ番組でも、誕生日はこんな日だった、って話題を扱ってたっけ。思い切り影響されてるみてえだな。
───ひょっとすると。
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12月30日(火)
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