ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■いつか来たる結末、されど遠い未来であれ(4)
「それが偏(ひとえ)に、あなた方のためを思っての行動だった。・・・そう言っても、ですか?」
一瞬怯みはしたが、ルキアの方を伺ったところ、力強く頷いてくれる。
「・・・・・・ああ」
「私も一護の意見に賛成だ。聞いて後悔した方が良い」
「分かりました。・・・本当は口止めされてたんですけどね、また同じようなこと繰り返されても困りますし」
目の前にいるぬいぐるみの鼻を、咎めるように1度だけ突付いてから、浦原さんは話してくれた。
「ま、要はコンさんの置かれた立場が極めて厄介だったから、なんですけどね・・・」
*********
それは、ほんの1週間前のこと。店には浦原さんとテッサイさんだけがいた時、唐突にコンがぬいぐるみ姿のまま現れたらしい。
何やら深刻な雰囲気のコンを、とりあえず長丁場になると判断したテッサイさんが今いる茶の間へと通したところ、あいつはいきなり頼み込んだのだ。
『頼む、浦原! 俺に記換神機を譲ってくれ!』
当然、浦原さんは断った。義魂丸もそうだが彼の扱う尸魂界製の道具は、簡単な気持ちで使っていい代物ではない。
理由を尋ねた浦原さんに、コンは何度となく躊躇した後、ボソリと呟いたんだそうだ。
『多分俺、もうすぐ砕けて壊れちまう。この間一護の体から抜ける時、魂魄の辺りがギシギシ軋んで、痛くてたまらなかったんだ』
───それはむろん、改造魂魄が壊れる前の自覚症状。
ただちに状況を悟った浦原さんだったけど、それがどうして記換神機を欲しいということに繋がるのか、そっちは理解できなくて。
とりあえず診察をしてみたらどうだ、と持ちかけたのだ。単に、俺の抜き方がまずかった可能性もあるし、今ならまだ治療のしようもあるかもしれないから、と。
だが治療、と聞いてコンは、
『ぬいぐるみの方はともかく、改造魂魄本体に治療が必要なのかよ?』
と返したのだ。それこそ、何を言われているのか分からない、と言わんばかりの表情で・・・。
───確かに、かつてコンたちを作った技術開発局も、改造魂魄のことは『多少使い勝手の良い、量産できる尖兵』と言う認識しか持ち得なかったのは事実。
でも、それなりに付き合いのあるコンに対しては、さしもの浦原さんも情が移りつつあったみたいで。何の気負いも、何の疑問もなくそう言われてしまったことに、思わず絶句させられたのだと言う。・・・まあそれだけ、あいつの置かれてた環境が苛酷だった、って証拠なんだろうけど
とっさに何も答えられなかった浦原さんに、コンは静かに訴えたらしい。
『今なら・・・俺様があいつの身代わりしなくてもいい状態が長く続いてる今なら、きっと記憶を消しても不自然じゃねえよ。義魂丸を使ってた、って記憶操作すれば済むだろ?
あいつ・・・一護のヤツさあ、ちょっと気負いすぎてるっつーか、必要以上に重荷、背負ってる気がしてならねえんだ。だからこの際荷物の方から、気取られないうちに降りてやろう、って思ってさ。ちょうどいいじゃん。やっと平和になったんだし、これ以上しんどい思いしなくてもよ。
もともと廃棄処分されるはずだった俺がいなくなれば、あいつが尸魂界に処分されるって危険も、なくなるんだろうし』
あまりに達観しきった主張は、さすがの浦原さんにも作戦の変更を迫らせた。
変に説得しようとしたところで、コンが決意を変えようとしないのは目に見えている。だから、記換神機を買う金がない、という方向から攻めることにしたのだ。
曰く、現在自分が極秘裏に進めている実験があり、それには希少価値の改造魂魄が必要。その実験に、死ぬ間際で良いから付き合ってくれると約束したら、代わりに記換神機と義魂丸を提供しよう、と───。
その約束の日、つまりは実験決行の日が、まさに今日。コンはそれまでに覚悟を固めかけていて、更にルキアの訪問により、完全に心を決めた───まあ、こんなところか。
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12月04日(木)
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