ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■いつか来たる結末、されど遠い未来であれ(1)
 ようやっと顔を上げた後、コンが俺に向かって言い放った言葉に、俺は更に驚くこととなる。

「・・・悪かったな、一護。それと、ありがとな。井上さんからも、お前からお礼言っておいてくれよ」
「はあ? あのなあ、俺に言付けてどうするんだよ。いつでも良いからお前が直接、礼言えっての」

 詫びやお礼は、出来るだけ人を介さず、直接本人へ。それが人に対する、最低限の礼儀ってもんだろ。
 大体、何かすると井上に会いたがるのだから、口実を作ってやりさえすればコンは自主的に会いにいくだろう───そう踏んでいたのに。

 予想に反してコンのヤツ、やけに冷え冷えとした視線を俺に浴びせやがった。

「一護、お前なあ・・・折角俺様がチャンス作ってやってるのに、何ボケたこと言ってやがるんだよ?」
「チャンス? 何のだよ」
「お前が井上さんに会いに行く口実、だよ。あーやだやだ、これだからお子ちゃまは」
「余計なお世話だ☆ 大体俺は、今日帰り際にちゃんと、井上とまた会おうって約束してんだよ」
「ほーぅ、おめーにしちゃ上出来じゃねえか。彼氏になりゃ、さすがに甲斐性も出てくるってもんだな、おい?」
「うっせ。とにかく、井上にちゃんと礼言えよ?」
「・・・・・・」
「返事は?」
「わーったよ。そのうち礼言いに行くって」

 ・・・何でそこで、いかにもめんどくさそうな言い方をするんだよ、この野郎。井上の好意が重荷とでも言いてえのか?

 俺のもやもやした心境をよそに、コンは「あー疲れた」と言いながら、背中に背負っていたものを床に降ろす。見ればそれは、風呂敷包みだった。

 ああなるほど、だから家の壁を登ってくる時、少しだけ手間取ってたのか。
 ・・・じゃなくて。

「お前まさか、どっかでお菓子でも買い込んできたのかよ? ああ、だからか? 折角買って来たお菓子が食べられなくなるから、井上から貰ったキャラメルがあんまり嬉しくなかった、ってか?」
「え?」
「けど、ちょっと待て。お前、そのぬいぐるみの格好で、どうやってお菓子買うンだよ?」
「あ、いや、その・・・」
「って、そんなの分かりきってるか。浦原商店なら、その格好でもOKだもんな」
「・・・・・・。分かってるなら、最初から俺に聞くなよ一護。大体、何だよその態度。てめえで聞いといて、てめえで答えんなって。質問の意味、ねえじゃねえか☆」

 イヤ、質問しながら理解する、ってこと、日常でも結構あるだろうがよ。

 もっとも、俺のそんな受け答えがコンには気に食わなかったらしくて。
「もー何でもいいから、寝るっ。俺の荷物触るなよ?」と風呂敷包みを引きずりながら、押入れへと引っ込む。

 どうも最近、反抗的だよな、コンのヤツ。俺がコンなしでも、代行証で死神化できるのが、よっぽど気に食わねえんだろうケド。

 実際、虚圏から戻ってきてからこの方、ほとんどコンに体預けたこと、なかったしな。一度だけ預けたことがあったけど、あの野郎、置いていった代行証勝手に使って抜けやがったし。夜でこの部屋だったから良かったものの、もし他のヤツに見られてたら救急車騒ぎだったぞ、アレは。

 押入れの中からごそごそと言う音が聞こえていたけど、それもほんの数分のこと。そのうち唐突に静かになったから、俺はコンがそのまま寝入ったのだろう、と判断したのだった。


 やっと訪れた、平安な日常。
 いつも通りの、穏やか・・・と言うのとは少し違うが、死神代行を務めながらの、毎日。
 以前とは多少の変化はあったにせよ、それらは俺が目くじらを立てるほどのものでは、決してなく。

 ・・・だけど。
 俺は後日、心底悔いる羽目に陥るのだ。
 この夜、僅かながら現れていた違和感に気づいていながら、何の手立ても打たなかった、自分を。

≪続く≫

12月01日(月)
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