ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■その扉を開くのは(前編)【鳴門】
 ナルトの言うところの『ゲキマユ先生』こと、カカシの同期でもあるマイト・ガイは、戦争終結後意識不明となり、未だにベッドにつながれている。

 それもある意味、無理はない。
 彼はあの うちはマダラ相手に体術一本で立ち向かい、八門遁甲の陣『夜ガイ』まで繰り出して奮戦したものの、叶わず。挙句、無理矢理リミッターを外したせいでそれを閉じる手立てがないまま、チャクラを枯渇させて危うく死ぬところだったのだ。

 運良く、その後駆けつけたナルトが、当人曰く『うまく説明できない』方法でチャクラの流出を止めるのに成功し、何とか助かった───はず、だった。

 だがまさか───ガイが満身創痍の身に鞭打って行方をくらます、などという無茶を自らの意思で行なおうとは、一体誰が想像できただろうか。


 あの日、真っ先に異変に気づいたのは、近日中に暗部へ所属されることが決まっている、うちはサスケだった。
 ナルトやサクラと久方ぶりの、口論と言う名のコミュニケーションをとっていた時、不意に眉をひそめたかと思うと、カカシに詰め寄ったのだ。


『おい、カカシ。ガイ・・・先生はどこへ行った? さっきまではその辺に、リーたちと一緒にいたはずだろう?』


 ───その言葉の深刻さに、誰もがすぐには気づけなかった。

 オーバーアクションと騒々しさから皆がいつもは忘れているが、ガイは上忍にまで上り詰めた叩き上げの実力者。その気になれば一瞬で、姿を消すぐらい造作もない。

 ただし───それは、体が万全であれば、の話。今、そんな馬鹿な真似をすれば、治る怪我も治らないではないか・・・!

 一同騒然となる中、白眼で探そうとするヒナタをとっさに押しとどめ、カカシは思い当たる場所へと一気に駆けつけた。
 そして見つけたのだ。木ノ葉の里の外れ、墓地の一角で倒れているガイの姿を。

 彼は既に意識を失っていて、カカシが声をかけても、その後駆けつけたリーたちが呼びかけても、目を開けることなく───今に至る。


『何故、こんな馬鹿なことを・・・』


 その後カカシも極度の疲労で昏倒したので、状況は又聞きでしか知らない。
 ただ、ガイの治療に当たった医療班が、口々に言っていたらしい。「こんな体でよく、あんな遠くまで移動できたものだ」と。
 そして更に口をそろえて、「下手に動けばこうなることは、本人が一番良く分かっていたはずなのに、どうして」とも診断されていたようだ。

 カカシにもその理由は分からなかった。第一、あの時ガイに何かあれば、そばにいた一番弟子のリーが自分を責めて悔いることなど、彼が知らないはずもなかろうに、と。

 ・・・現に今、まさにそうなっているし。


 その認識が若干変化したのは、こちらも怪我をして療養中だった火影・綱手に再会してからだ。
 部下の様子を見に訪れた彼女は、ガイも見舞った帰りだと告げ、その病状について教えてくれた。


『リーたちにも言ったのだがな。今のガイの治療は正直、芳しくない。体があちこちガタが来ているし、よしんば起き上がれるようになったとしても・・・おそらくもう、忍として働くのは不可能だろう』
『やはり・・・そうですか』
『中忍試験の際のリーの怪我もひどかったが、今回のは比べものにならないぐらいだ。多分、手術すら出来る状態じゃない。
・・・本人はこうなる可能性を、初めから分かっていた筈だがな』
『自分の体は自分が良く分かっている、って奴ですね』
『ああ。だが、こう言う言い方はマズいのだろうが、今のまま眠っていた方が本人にとっては幸いなのかも知れんな。あいつが忍をやめるなど、想像すら出来ない』
『・・・俺もです』
『あるいは・・・ガイがあんな無茶をやらかしたのは、己の忍としての寿命を認めたくなかったからかも、知れんな。自分はまだ動けるのだ、と証明したくて、けれど出来ずに倒れた・・・と言ったところか。
もっともそうなると、今度はどうして自分の父親の墓前へ赴いたのかの、見当がつかないがな』
『・・・・・・・』



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10月06日(月)
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