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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■みんなでごはんを食べようか 前編【鳴門】
ただ、ガイが自ら作るカレーにどんな思いを抱いているのか、あれからずっと知りそびれているのも事実だ。
プライベートに深く根を下ろしているであろうことが明白なそれが気にならない、と言えば嘘になる。とはいえ、一番弟子を自称するリーですら、その辺はわきまえてか尋ねようとはしない。そんな彼を差し置いて、自分が聞くのもどんなものか。
遠慮やら、気恥ずかしさやらが絡んで、今日も結局その辺の理由を聞き損ねるのだろう───そうネジは踏んでいたのだが。
「・・・ん?」
今日はいつもと違っていた。
自分たちと同じく、嬉しげにカレーに舌鼓を打っていたはずのガイが、唐突に手を止めたかと思うと、黙って両目を閉じる。・・・これは、何かの気配を探っている際の彼、独特の仕草だ。
「何であいつが・・・チッ、今日は里外じゃなかったのか?」
「え? どうなさったんですか? ガイ先生」
「ちょっとな。スマンがリー、テンテン。そこを開けておいてくれ」
「そこ、って・・・。あたしとリーの席の間、ですか?」
「ガイ、誰かが訪ねてくるのか?」
「そう言うことだ。それとネジ、そこの棚から、カレー皿とスプーンを1つずつ、出しておいてくれ」
部下たちに次々と指示を出しつつも、ガイはやれやれ、と言わんばかりの表情を浮かべる。
それからわずか、20秒後。
「こんばんわ〜。ガイー、お呼ばれに来たよ〜」
顔下半分は口布で覆われ、写輪眼の左目は額当てで隠し、右目しかあらわになっていないにもかかわらず、笑顔でいるのがまる分かりの忍、はたけカカシが、チャイムと共に玄関先へ現れた。
ただ訪ねて来た、だけならともかく、どうやら彼は夕食のお相伴に預かりに来たらしい。
イヤ、今日の夕飯がカレーだ、と言うことは、近くまで来れば匂いで分かることではあるが。
「カカシ・・・お前、帰還は明日じゃなかったのか?」
「うん、まあね。実は予定よりサクサク進んじゃったもんだから、おなかペコペコでさあ。でも、自分で作るのは面倒くさいし、どこかの食堂とかで食べるのも気疲れするし。ガイのトコ今晩カレーなら、俺の分ぐらい楽にひねり出せるよね?」
「言っておくが、今晩は生卵は残っていないぞ」
味にまろやかさを出すため、ネジたちはカレーに新鮮な卵を落として食べている。衛生上の問題から、いつも食べる直前に食べる分だけその筋の店で取り寄せていて、ガイはそのことを指して暗に『お前は呼んでない』とカカシに釘を刺したわけだったが。
「分かってるって。どうせそうだろうって思ってたから、ほら、ちゃんと生卵は持参済み〜v」
ンなことで抜け目なさ発揮して、どーすんだ☆
即座にツッこむ、ガイ班全員。
カカシもさすがに、ちょっと辛目のガイ特製カレーは卵なしでは食べないのか。
いや、そんな味覚嗜好より何より、最初から今日はカレーだと察した上で、カレーを食べる気満々で来たのか、この上忍は。
「いやーどーも。ネジ君にリー君にテンテンちゃん。ちょっとお邪魔するねー」
どこから指摘すればいいのか混乱中のガイの部下たちをよそに、カカシは開けてもらった空間に上機嫌で座る。
そのあまりの図々しさに、ガイはカカシを一瞥してからわざとらしくため息をついた。
「サクサク進んだ、と言った割には、こぎれいな格好だな、カカシ。さすがに人の家を訪ねる前に、風呂ぐらいは入ってきたと見える」
「ええー、だって以前、仕事帰りそのままで押しかけたら、ものすごく怒ったじゃない。俺にも学習能力はあるよ」
いったいどんな格好で押しかけたと言うのか。ひょっとして、思い切り食欲減退するようなスプラッタ状態とか?
この調子では、たまたま自分たちが今まで遭遇していなかっただけで、カカシはかなり頻繁にガイのところへ、夕食をせしめに来たことがあると見える。
ネジはそれを悟って、エリートだのなんだのと言われている男の実態に、あきれ返るのだった。
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08月02日(土)
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