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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■snow snow snow(BL■ACH コンBD)
あー、また雪が降ってきたー、と喜ぶ声に紛れて、けれどコンは聞き捨てならないことを口にする。
「せめて誕生日ぐらいは一緒に、って思うのはよ・・・」
───誕生日?
「ちょっと待て。今日、お前の誕生日なのか?」
「やべ・・・今、声に出てたか?」
「そう言う問題じゃねえよ。大体お前、以前俺が聞いた時、きっぱり『知らねえ』って言ってなかったか? 本当は今日、11月30日が誕生日かよ? もうちょっとで終わりじゃねえか!」
俺は戸惑いを隠し切れねえ。
───確かあれは、まだ今月の話。
遊子と夏梨のためにクリスマスプレゼントを買っておけと親父に厳達されて、俺はわざわざ学校を休んで(妹たちの目に触れないためだ!)デパートへと1人で繰り出した。・・・イヤ、正確にはぬいぐるみ姿のコンも一緒に、万が一虚が出現したらマズいってんで、交代要員として肩の辺りにくっつけて外出したんだ。
(カバンの中には入れておけない。万が一万引きと間違われたら厄介だし)
結局虚は出なかったが、帰り道荷物を抱えて帰ろうとした俺は、運悪く通り雨に出くわして。折角のプレゼントを濡らすわけには行かなかったから、家電量販店の軒下で晴れ間を待つことにした。
そこで放映していたテレビ番組が、ちょうど有名芸能人の誕生日とやらを祝っていた最中だったのだ。
生まれた日はどんな出来事があったとか、どんな年だったとか、同じ誕生日の芸能人がいるとか、いかにも視聴者の興味の惹きそうな内容だったことを、覚えている。
あの時軒下には、俺とコン以外誰もおらず。雨音とテレビの音声だけが聞こえる中、番組がコマーシャルに切り替わった頃、おもむろに聞かれたっけ。
『なあ一護。誕生日って自分を祝うよりも、周りの人間に感謝する日だって、ホントか?』
『確かにそういう面もあるかもな』
『だったらお前も、家族に感謝してんのか?』
『・・・とりあえず、だけど一応は、な』
一瞬言葉が途切れたのは、お袋のことを思い出したから。・・・ああ、あの時も俺は、お袋のことを考えてたのか。
『一護の誕生日っていつだ?』
『7月15日。・・・そう言うお前は?』
『知らねー』
『・・・そっか』
何故知らないのかは何となく想像出来たから、それ以上は追求することは出来ず。
そしてタイミング良く雨が上がって、荷物を抱えて走り出した俺はそれっきり、その話題に触れることはなかった───。
「・・・別に嘘ついてたわけじゃねえよ。ホントにあの時は知らなかったんだ」
コンは俺の顔を珍しくしかめて、こちらの抗議に答えた。
「けど、やっぱ気になってよ。あの後、お前が虚退治に出かけた時体借りて、浦原ンとこへ行ったんだ」
「浦原さんのところへ? 誕生日聞きにか?」
「ンなわけねえだろ。大体いくら元・技術開発局々長だったからって、改造魂魄の個々の製造年月日まで覚えてられないしよ
俺が聞いたのは、モッド・ソウルが廃棄されるって決定された日の方」
コンの言葉に、俺はこいつと面と向かって話した初めての日を思い出す。
『俺が作られてすぐに尸魂界は、モッドソウルの廃棄命令を出した』
『つまりそれは、作られた次の日には、死ぬ日が決まってたってことだ』
つまり、廃棄決定日が分かれば、コンの誕生日もすぐに分かるということで。
「で、歳はナイショだけど、作られたのが今日だ、って分かったってワケ」
「だったらルキアにも、ちゃんとそのこと言えば良かったろうがよ。そうすれば・・・」
「別に良いんだって。そんな大げさなことじゃねえし、大体どうやって姐さん連れ出すんだよ?
『所持することすら違法な改造魂魄の誕生日祝うために』なんて、言えるわけねえだろ?」
廃棄されることに怯えて、途中で自分の歳すら数えるのをやめてしまったであろう改造魂魄の生き残りは、そう俺を宥める。
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12月30日(火)
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