ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■いつか来たる結末、されど遠い未来であれ(4)
 テッサイさんにお茶を淹れてもらいながら、浦原さんは畳の間に座った。それにつられるように俺とルキアは、その向かい側へ腰を降ろす。

 それぞれの前にお茶を置き終えるのを見計らって、口を開いたのはルキアだった。その指先で、ぬいぐるみの頭を優しく撫でながら。

「・・・私が来ているのが分かったら、何か都合が良かったと言うのか?」
「材料集めと必要経費っス。今回何が手間取ったって、コンさんに施すコーティング剤の原料を集めることでしたから。さすがに店で揃えてるものだけでは足りなくて、急遽夜一さんにもお頼みして、尸魂界でかき集めて来て貰ったんスよ。むろん、護廷十三隊には知られないように、秘密裏にね」
「材料はともかく、治療費取るのかよてめえ。コンの命がかかってたんだろうが」
「アタシもボランティアでやってるわけじゃありませんから。それに、夜一さんだけで集められないものを好事家から、買い取る必要があったんですよ」
「それも秘密裏故に、相応の経費が必要だった、と言うわけだな?」

 コックリ頷く浦原さんを見ながら、俺はつくづく自分が無力な子供だということを痛感させられていた。
 確かに今の俺にはコン同様、自由になる大金があるわけじゃない。後で分かったのは、俺がこれまで倒した虚の何匹かには追加給金があったものの、それも微々たるもの。コンの治療費には、あいにく足りなかったって話だ。

 とりあえず、かかった必要経費は後日現金でルキアが支払う、と話がまとまったところで。

「・・・で? 浦原さん、あんたは一体どういうつもりで、今回の騒動を計画したんだ?」

 俺はおもむろに、今一番気になることを直接、ぶつけることにした。

「はい? 何のことっスか?」
「とぼけんな。コンに、本来なら必要のねえ義魂丸渡したのは、俺たちに警告を促すためだったのは分かる。口で言うよりは、自分たちで気づかせた方がコトの深刻さを思い知る、って意味だろ」

 確かにこのところ、藍染との戦いが終結したばかりってんで、少し油断してたのは事実だ。だからこそ浦原さんは、手がかりをあれこれとわざとらしく提示して、コンの危機を俺たち自身で感知するように仕向けたに違いない。でなきゃ俺とルキアは、真相にたどり着くのにもっと時間がかかったはずだ。
 案の定、とぼけた商人は俺の質問を否定しやしない。

「・・・分かってるんだったら、何も聞く必要なんてないでしょうに」
「俺が分からねえのは、コンが本気で死ぬ覚悟でいたらしい、ってことだ。あいつは必要以上に仲間と関わらないようにして、記換神機で記憶を差し替えても違和感のないように仕向けてる。
・・・あんた、まさかとは思うが、コンに治療のこと、全然話してなかったんじゃねえのか?」

 俺の言葉に、ルキアはハッとした顔つきになる。

 ───そう。このところコンは、明らかに挙動不審だった。
 いつもなら口実すらなくても会いたがった井上に、キャラメルの礼を言いに行けと何度もすすめたにも拘らず、ついに行かなかったのがその証拠。
 もし端から治る見込みがあるんだったら、あいつはその可能性にくらいついたんじゃねえのか? なのにあいつの態度は、むしろ潔いと例えていいぐらい、生に執着していなかった。

 疑惑でつい目つきが悪くなる俺の前で、浦原さんは困ったような笑みを浮かべる。

「そうっス。まるで話してませんでした」
「! 何故だ浦原!?」
「1つには、コーティング剤の準備が出来るまでに、果たしてコンさんの魂魄が『もつ』か、と言う問題があったんです。下手に期待をさせておいて、実際には出来ませんでした、じゃ、そっちの方がよほど残酷でしょ?」
「残りの理由は?」
「・・・やっぱり、話さなきゃいけませんかねえ?」

 のらりくらりと構え、こちらの出方を伺うような視線を向ける浦原さん。

「ここまで話しといて、今更何隠す必要あんだよ?」
「聞かない方が、きっと良いと思うんですけどねえ」
「聞いても聞かなくても後悔するんだったら、俺は聞く方を選ぶぜ」

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12月04日(木)
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