ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■9年越しの水神祭 モン○ーターン
「おおい榎木、可愛い先輩の危機じゃあ、さっさと助けんかいーー」
一瞬波多野君が、すがるような目で私を見たような気がしたのだが。
それには構わずに遅ばせながら、先輩たちの手伝いに加わることにした私である。
「可愛い先輩だからこそ、めいっぱい祝福してあげたいじゃないですか」
「こらあ! 榎木、この薄情もん〜!!」
「大人しく祝福されてくださいよ、蒲生さん。・・・波多野君たちも、この人が何と文句を言っても耳、貸さなくて良いから」
「「「げっ・・・・・☆」」」
なるべく愛想良く告げたつもりが、その言葉で波多野君の顔がさらに引きつるのが見て取れた。・・・有無も言わせぬ、って気持ちがまともに口に出てしまったらしいな。ふむ。
そうして、情け容赦なく宙へと放り出された蒲生さんに、私は万感の気持ちを込めて叫んだのである。
「おめでとう、蒲生『先輩』!!」
「・・・・・・!!」
ゲラゲラ受けている先輩たちには、そして遠巻きにしてみているしかない波多野君たちには、聞こえなかったであろう私の、その言葉。
でも。
蒲生さんには確実に聞こえていたようで。
どっぽーーーーん☆
大きく目を見開いたまま、彼は水面に沈んだ・・・。
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───そうだ。
結局、G1初出場で初勝利を上げたあのすぐ後、私はレース中の事故で大怪我をして、A1級から落ちてしまい。
加えて蒲生さんがあの、悪夢のフライングでSGから姿を消して。
蒲生さんと私は、F明けの一般戦等で時々顔を合わせることもありはしたものの、まだ気安く挨拶できるような雰囲気にもなれず。
不運とタイミングの悪さが重なり続け、結果、私の蒲生さんへの「水神祭」返しは延々、9年も持ち越しになってしまっていたのだ。
蒲生さんもまさか私が9年間も、そのことにこだわっていようとは思ってもみなかっただろう。現に私も、実際に水神祭に立ち会うまで、実感できずにいたのだが。
けれど。
この「水神祭」返しは私にとって、蒲生さんのSG復帰を再確認させてくれる儀式、そのもの。
気が置けない良き先輩であり、また、手ごわいライバルでもある彼が、再び私と同じ舞台へと這い登ってきた証みたいな気がして、つい参加せずにはいられなかったのだ。
・・・多少は蒲生さんに恨みは抱かれようが、そこは勝手に許してもらうことにしよう。
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「かーーーっっ! 冷たさが目にしみりよるーー! ホンマ、後輩思いの律儀な先輩たちばっかじゃのお、SGはぁ!!」
全身ずぶ濡れで戻って来た蒲生さんは、口では悪態をつきながらも苦笑いしている。手荒な祝福の気持ちは、ちゃんと受け取っているのだろう。
私や観客だけではないのだから。「天才・蒲生」がGSに戻ってくるのを待っていたのは。
「先輩思いの後輩のことは、誉めてくれないんですか? 蒲生さん」
「なーにを抜けぬけと抜かしよるか☆ 見捨てたくせに」
それでも蒲生さんは、笑いながら答えてくれる。彼らしい、ざっくばらんな態度で。
そうして、大急ぎでインタビューへと向かおうと私の横をすれ違おうとした時。
彼は何とも言えない、困ったような笑みで、尋ねて来たのだ。
「で、榎木よ。待たせた恨み、晴らせたんか? 9年分の」
むろん、私は答えてあげる。
「ええ。それはもうすっきりと、9年分も」
《終》
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※ラストのセリフですが、「水神祭を」9年待たせた、って意味ですからね? 深読みしちゃ、ダメですよお?(←言わなきゃ誰も気づかんだろ(^^;;;)
どこぞのサイトさんだったか、「チャレンジ杯後、水神祭の蒲生さん」と言うイラストを目にしたことがありまして。そーいや蒲生さんはSG初優勝なんだから、それもありだろ! って話をここまで膨らませた次第です。
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09月28日(水)
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