ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!!(15)後編(完結)
 妙な脱力感に囚われて、あたしはつい額に手をやらずにはいられない。

 そりゃあねえ。
 それはまあ確かに、もしあの時お夏がいるっていう緊急事態じゃなかったら、あたしは何を差し置いても自分の顔を庇ってましたよ。それは自信を持って言えます。

 ・・・・・だけど。
 御厨さん1人に言われたんならいざ知らず、あの場に居合わせた《龍閃組》の連中全員に指摘されたって、一体・・・☆
 本当のことを言われたとはいえ、何だか癪に障るのって別に、被害妄想でも何でもないわよねえ・・・。


「ま、まあ良いわ。皆があたしの顔を、宝物のように大切に考えてくれていた、って考えれば、腹は立ちませんしね」


 あたしが苦し紛れにそう言うと、御厨さんの顔ったら、いつもあたしが見慣れてる『げんなり』としたのになったわ。

 ふふ、いい気味かも。この唐変木はいかにも武士らしく「男は顔じゃない」って思ってる男だから、こういうやり取りには慣れていないのよねー。
 この際だから、もう少しからかっちゃいましょv


「何嫌そうな顔してるんですか、御厨さん」
「い、いえ、別にそういうわけでは」
「いけませんよ。いつもしゃんとしてなさいな。いくら男は顔じゃないからって、身だしなみを怠る男がモテるワケでもありませんからねえ。お凛にそっぽ向かれても知りませんよ」
「お凛は人間を外見で推し量るような、安易な女じゃありません」


 ───あら、そう来たか。
 まあ確かにあのお凛だったら、男の顔より生き様で、伴侶を求めそうだわね。

 でも御厨さん、あなた分かってるの? それって自分がお凛に惚れてるって、暗に認めているようにも解釈できるわよ。
 ヌケヌケと惚気ているんだったら朴念仁にしては粋、ってところなんでしょうけど、きっと自分でも気づいてないわね。武士の情けで、気づかなかったことにしてあげましょ。


 ああ、あたしってば何て部下思いの上司でしょ、なんて1人で陶酔していたあたしに、
「そう言えば」
と、御厨さんが今思い出した風に打ち明ける。


「外見云々で思い出しましたが、あのお夏ちゃんから伝言があったんでした」


 え? あの子供があたしに? 何伝言したんだろ。・・・思い当たる節がないわねえ。


 困惑するあたしを他所に、御厨さんは明らかに苦笑、と分かる表情で続けた。


「いえ、ほんのささやかなことなんですけどね。
『お夏を助けてくれて』『おとうを庇ってくれて』『そして、勇之介ちゃんときちんと話をしてくれて、ありがとう』って言ってましたよ。
それと・・・外見は全然だけど、どこか気弱そうなのに勇気があるところはそっくりだそうですよ。勇之介に、榊さんは。このご恩は決して忘れない、ってことです」
「べ、別に子供に恩義感じられても、あたしは痛くも痒くもありませんからね。そ、それに、き、気弱そうだってのは余計ですよ」


 と、つい照れ隠しに言いはしたけれど。

 お夏からのその伝言こそが、あたしにとって、この事件で一番の収穫だった。




 ホント、今日は空が隅々まで晴れ渡ったいい天気ですこと。
 今日みたいな時こそ、いつもの習慣を復活させないと嘘ってモンよね。


「御厨さん、どうせだからこれからちょっとあたしに付き合いなさいな」
「どこへお出かけになられるんです?」
「向島の長命寺。久しぶりにあそこの水ですっきりと顔、洗いたい気分なんですよ。きっと火傷の治りかけにもいいでしょうしねv」
「お供仕ります」


 そう言って。
 あたしと御厨さんはゆっくりと、向島目指して歩き出したのだった。


 これで全て、一件落着〜!!


≪終≫


※お・・・終わった・・・何とか「血風帖」発売日前に、発表できた〜!!

 でもこれが実は「外法帖」本編の「邪」Diskにて、榊さんがカケラも出てこなかった理由だ、ってこじつけたら、怒ります?? イヤ、大火傷をして家から出られない状態だったから、主人公たちの前に姿を出さなかった、とかねv


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07月26日(月)
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