ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■過ぎし夢 来たる朝(1)外法帖・天戒×女主?
だがその事実を、外見だけで推し量ることは難しい。現に天戒たちも、つい先日までは彼女のことを男と思い、一緒に寝起きなどしていたほどだ。何せ動き易いように、旅の道中危険に遭わないようにと、彼女は男のなりをしていたし、涼やかでその実激しいものを秘めた目は、とても弱々しいものには見えなかったからだ。おまけに彼女がひとたび拳を振るえば、そこらの浪人など蹴散らしてしまうだろう。
───風貌こそ確かに、どこか中性的なものでありはしたが。
仲間の1人・桔梗を通して彼女の実力を見て取り、鬼哭村へ連れてきたのが1ヶ月前。馴れ馴れしいとは程遠くも、やや消極的ではありながら極めて友好的な彼女の態度に、この頃村人も徐々に親しみを覚え始めた。
どうしても封鎖的な村中にありながら、穏やかな光を感じさせる彼女の気質は人を惹き付ける。それは天戒たちも同様だった。いつしか龍斗は、昔からこの村にいた、必要不可欠な存在だったと言う錯覚まで感じていたものなのだが。
───その均衡が最近になって、少し崩れつつある。
ここ数日、彼女は元気がなかった。何かすると考え込むようになり、深く溜め息を吐いている。ただそれだけなら単なる物憂いだと解釈しただろうが、顔色も悪くなり、どうやら夜も眠れないでいるらしいとなると、話は別だ。
男相手なら話せないことも、あるいは同性相手になら───。桔梗にそう提案され、しばらく様子を見ていたものの、どうやらさしもの桔梗も悩みを打ち明けられる対象にはならなかったようで。龍斗の血色の悪さは、日に日にひどくなっているのが現状である。
もともと線の細い印象を受ける龍斗だったが、最近は儚さまで伝わってくる。口の悪い風祭ですら、気に病んでいつものようには彼女に突っかからない始末だ。
まるで今にも消え入りそうな気がする、と言って・・・。
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───そんな最悪の体調のはずの彼女が、着衣のままとは言えどうして水になど入るのか。天戒は気が気ではない。
<馬鹿な・・・今の季節はまだ、ここの水は切るように冷たい。それを日の出ている昼間ならともかく、こんな寒い真夜中に泳ぐなど自殺行為に等しいではないか!>
───そう思った時、天戒は自分の考えにぞっとなる。
<まさか・・・まさかここで死ぬつもりではあるまいな!?>
水の中へ入ろうと、とっさに水辺に駆け込む天戒だったが。
「・・・・・?」
激しく流れ落ちる水の下で、座禅を組むようにして座り込んだ彼女を見た時、一瞬にして不安は霧散した。
龍斗は目を閉じて座っていた。明らかに、自らの意志で。
今の彼女からは、確かにある種の痛々しさは感じられはする。だが、昼間感じる儚さは、微塵も伝わって来ない。
<何か・・・意味があるのか? この行為には・・・>
今の龍斗には、他人の介入を受け付けさせないような、妙な迫力がある。そう、固い決意のような・・・。
「・・・・・」
天戒は溜め息を1つつくと、彼女が滝の下から出てくるのを待つことにするのだった。
むろん、体力的に無茶だと判断すれば、無理矢理にでも岸へ引っ張り上げるつもりで。
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───結局、龍斗が滝から岸へと上がってきたのは、天戒がそろそろ無理にでも・・・と動こうとした、まさにその時である。
濡れた髪をかき上げながら岸へと戻って来た龍斗は、さすがに天戒の姿に驚いていたらしい。
「天戒殿・・・」
「待ちくたびれたぞ龍斗。真夜中にご苦労なことだな」
緩やかに笑って迎えると、彼女もつられて笑みを漏らす。夜の闇もあいまって、どこかやはり儚い印象は受けたが。
「・・・すみません。皆を起こさないよう抜け出したつもりだったのですが、かえって気を遣わせてしまったようですね」
「いや、気に病むことはないぞ。たまたま目が覚めていただけだ」
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02月23日(土)
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