ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■Darling(3)SD・流×彩?
 流川の心境を知ってか知らずか、彩子はいつしかそう呟き始めている。
「不思議なんだけど・・・どうしても考えつかないのよ。あたしがただ1人を応援してる姿ってものが。あたしが好きなのは、バスケットボールを追いかけてる『みんな』なんだもの・・・。ううん、ひょっとしたら、『みんなが』追いかけてるバスケットボールの方かも、知れない。ドキドキするの。ボールを掴む時の手に当たった感触。ボールが飛んで行くその方角に。・・・おかしいわよね、何だか、バスケそのものに恋してるみたいで・・・」

 流川は合点が行く。だから、あんな風に言ったのかと。

 ───あたしにとって・・・バスケは恋人みたいなものなんです。

 それは流川も同じことだ。だけど決して、自分がおかしいとは思わない。
 だから、彩子にもそう感じて欲しくはなかった。
 なのに彼女の独り言は、そのうち妙な方向へと曲がって行く。

「やっぱり・・・塚本先輩に言われた時、交際OKすれば良かったのかな・・・そうすれば、部のみんなにも迷惑かけずにすんだのかなあ・・・」
「ンなことねー!!」
 思いもかけず大きくなってしまった声に、流川は自分でも驚いていた。顔には出さなかったが。
「ご、ごめん、愚痴るつもりはなかったのよ」
 今まで無口だった後輩の反論がよほど信じられなかったらしい。どうやら彩子は「聞かせられたくもない愚痴を延々聞かされた事」で流川が怒っている、と解釈したようだ。

「そう・・・よね。流川みたいに真面目にバスケをしてる人間にして見れば、ものすごく不真面目よね、今の。もう言わないわ、安心して」
 その言葉通り、彩子は黙り込んでしまった。
 だが当然のことながら、問題が解決したわけではない。口に出さないだけ、心にためこんで苦しそうな彩子を見かねて、流川は思わず言っていた。
「・・・勝てばいー」
「え?」
「先輩抜きで勝てばいー」
「流川・・・」

 流川はゆっくりと顔を上げた。
 ちょうど同じくらいの高さにある彩子の目を真っ直ぐ見据え、流川は言う。強く。
「負けねーから」

 歩みは止まっていた。
 流川の言葉の意味をゆっくりと噛み締めた彩子は、ほんの少しだけ、泣きそうな顔になった。
 だけど、すぐに笑顔。
「・・・・ありがと」


 それから彩子を自宅まで送り届けた流川は、1人夜の道を自転車で走りながら考えていた。
 きっと彩子は、自分の言った事は単なる慰めだと思った事だろう。
 ちょっと手の届かない、誇大妄想みたいなものだと。単に彼女を励ますために口にした言葉なのだと。
 ───それでも彼女は笑ってくれた。今は・・・それだけでいい。
 流川は、そんな風に思える自分が少し不思議で、それと同じだけ誇らしかった。


(続)

09月05日(水)
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