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衛澤のどーでもよさげ。
by 衛澤 創
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■もっと見えるように。
以前にも少し書いたかと思うが、ぼくは眼瞼下垂を患っている。眼瞼下垂とは、目蓋を持ち上げる筋肉である眼瞼挙筋が伸びて緩んでいたり、切れてしまっていたりして目蓋を持ち上げられない、つまり眼を大きく見開くことができない病気のこと。薄目を開けているような状態でものを見ることになる。

医師による図示左図はぼくが受診した信州大学医学部附属病院の形成外科医が書いてくれた図。片眼を顔の側面から見た図だ。眼は図の左に向いて開いている。
この図で言うと、ぼくの場合は赤い線で書かれた瞼膜と眼瞼挙筋が瞼板から離れてしまっていて、目蓋(眼瞼)自身の力では眼を開けることができない状態になっていた。

そうすると視野が狭くなって危ないので、知らず知らずのうちにぼくだけではなく眼瞼下垂を患う人は額の筋肉を使って無理にでも眼を開くようになるのだが、これが原因で頭痛や肩凝りや目眩、不安症状や睡眠障害を引き起こすことがある。ミュラー筋が必要以上に緊張することで副交感神経が刺激を受け続けることになり、それは即ち常に精神面が緊張している、ということである。

ぼくが今年三月に診断して貰ったときに測って貰った「緊張度」は、戦場にいるのと同じくらいだった。この緊張が解ければ、ぼくがいま抱えている持病である睡眠障害や鬱病やパニック障害も幾らか軽減されるかもしれない。せめて睡眠障害だけでも軽減されれば、とこれを治療するための手術を受けることにした。
手術のための入院記録を改めて別の頁にまとめてみようと考えているので、詳細な次第については後日そちらを御覧頂きたい。

さて、先にちらりと書いた通り、ぼくは眼瞼下垂治療の手術を信州大学医学部附属病院で受けた。正しく言えば信州大学医学部附属病院形成外科にいる眼瞼下垂の専門医が執刀する手術を、長野県松本市(信州大学がある)の別の病院で受けた。何故わざわざ松本市まで出掛けていったかと言うと、眼瞼下垂を治療する眼科医や形成外科医はほかにもいるが、眼瞼下垂を専門に診る医師は信州大学医学部附属病院にしかいないからだ。手術もその医師が一番巧いとの評判だ。

ぼくが住む街から松本市までは、電車と高速バスを乗り継いで七時間掛かる。松本市には空港があり、ぼくが住む街から近い場所にも空港があるので飛行機に乗ればもっともっと短い時間で辿り着くことができるが、それができるほどぼくは裕福ではない。電車とバスで行けば時間は掛かるが飛行機の四分の一程度の金額で済む。
たっぷりとある移動時間を如何に退屈しないで過ごすかが疲労感を募らせないための重要点である。ぼくは二冊の文庫本を用意した。まとまった時間があれば本を読むに限る、と思っているからだ。

今回の旅でぼくが読んだのは岡本太郎氏の「今日の芸術」と「自分の中に毒を持て」。前者は往路で、後者は復路の高速バスの中で読んだ。
何れも読みやすく、おもしろかった。「おもしろい」というのは「興味深い」ということだが、同時に読んで愉しい気持ちになるものでもあった。平易な文章で愉快なことが沢山書いてある。未読の方にはぜひお勧めしたい。

「今日の芸術」は一九五四年に書かれたもの。しかしここには、ぼくが生まれてから三〇年掛かってやっと辿り着いた、やっと気付いたことが沢山書かれている。ぼくが生まれる一六年も前に既に書物として著わされていて、ぼくがこれまで生きた三〇と数年は大変な遠まわりに過ぎなかったのかと愕然とする。

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08月28日(月)
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