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衛澤のどーでもよさげ。
by 衛澤 創
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■何だかんだ言って。
「ハウルの動く城」をレイトショー(1200円)で観てきました。
まだ観ていなくて観るか否かを迷っている方へ。御覧なさい。もしも観賞料金を全額支払ったとしても最初の15分でそれは元が取れてしまうから。「物語とはこうやって組み立てるものなのだよ」という御手本を見るような導入部。そして、「掴み」にもなる「動く城」登場場面。ここだけでペイします。但し、これは「アニメーション」を見たい人のみ。ただ愉しければ何でもいいという人には私は敢えて勧めはしません。

公開前からいろいろとやっかみをも含んだ映画評が並べられていましたが、宮崎駿監督はいま日本でまともにアニメーションを制作している数少ないうちのひとりなのだと改めて思いました。「これがアニメーションなんだよ!」と諸手を挙げてよろこびたい場面が次々と出てきてとてもうれしかったです。

これから御覧になろうという方に。
映画の内容に関する事前情報は可能な限り仕入れない、真っ白の状態で御覧になることをお勧めします。粗筋もキャストも御存知ない方がよろしいです。原作を読むなんて以ての外です。原作を読むのは映画を観てからでも遅くはありません。パンフレットも観賞後にお読みになる方がよいです。
それから、御覧になる劇場は音響設備のしっかりしたところを択ばないと観賞料金はペイしないかもしれません。ドルビーサラウンド6.1chは必須です。SEもBGMもすばらしい仕上がりです。

宮崎監督ファン、アニメーション好きの間でとてもとても心配されていたハウルの声ですが、これを理由に観るか否かを迷っているのなら、私は観た方がよいのではないかと思います。誰が声を当てているかは忘れて。声優への偏見がこの作品の評価を下げてしまっている側面もあるかと感じました。
公開前の広告宣伝の段階で「ハウル=木村拓哉」を広めすぎたのだと思います。むしろこれはひた隠しにして、スタッフロールにすら名前を出さずに、「ハウルの声は誰が演じていたでしょう」というクイズキャンペーンなどを張った方がより効果的だったのではないかと思いました。木村くんへの偏見がこの作品の評価を無駄に下げてしまっているのではないでしょうか。
「ハウル=木村拓哉」を忘れて御覧になってください。まったく気になりませんから。

それより、御覧頂きたいのはやはり城の動きなのです。
幾らデジタル技術が進んだからと言ってもやはりそれは万能ではないのだと言うことが判りました。とてつもないハーモニクス処理です。「ナウシカ」の王蟲などもこの処理技法で動かされていましたが、規模が違います。4本の脚が一歩踏み出すごとに轟音(この轟音も多重奏的に複雑に音が絡み重なり合っていてすごい!)を響かせて巨大な城が数多の「部品」をひとつひとつ重々しく揺すって稼働させて地面の上を移動するのです。巨大さ。重量感。「動いている」こと。これを見たら公開時期が遅れてしまったのも納得できてしまいます。

それから、風景。特に水の描写。うつくしいです。
そして「飛ぶ」場面。宮崎アニメは「飛んで何ぼ」です。飛ぶ場面のない宮崎アニメはおもしろさ半減です(だから「もののけ姫」はあまりおもしろくなかった)。あの「飛行感」とでも言いますか、ほんとうに重量のあるものが重力や引力の呪縛をものともせずに宙に浮き上がって推力で進んでいくさまはほかの映像作家には表現し得ないものといつもながらに感嘆します。
今作もおもしろい「飛ぶ乗りもの」が登場しました。宮崎作品に登場するスチームパンク風のメカデザインも味があってよろしいです。

この後はネタバレを含む内容になりますのであぶり出しにしておきます。事前情報をより少なく、という方はあぶり出さないように御願いします。

城の挙動や風景の描写、水の質感などアニメーションとして瞠目する部分は、それはそれは沢山あるのだけれど、何より驚かされるのは主人公ソフィだった。18歳の少女ソフィは突然に90歳の老婆になる呪いをかけられてしまう。素朴だが凛とした背すじの伸びたソフィが、ちょっとした傲慢さや大胆さを備え持った、腰の曲がった老婆になってしまう。70や80でなく「90歳」という平均より長寿であることが必要だったのだろうなと思う。あの腰の曲がり具合いは尋常ではない。

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12月12日(日)
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