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ドラマ!ドラマ!ドラマ!
by もっちゃん
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■フサちゃんと路木悟史←もと須賀ちゃんともいう
婚約者、「一番愛する者」を突然奪われた男が、犯人4人に復讐する話である。直接4人の命を奪うのでなく、4人の「一番愛する者」を奪う事で、復讐しようとする話しだ。法で裁かれなかった者達へ、仇を討つ、ということは、現代の日本では許されていないし、許されることもまた、危険だと思う。新しい殺人は殺人である。吉岡秀隆演じる若い刑事が路木悟史に訴えたとおり、路木悟史の婚約者と同じに(すでに3話が終)、3人に復讐を果たし終えたのだが、つまり殺された3人の女性は「なぜ、自分が殺されなければならないのか」わからないまま殺されていった。なんの罪も無いのに。ただの殺人である。しかも、路木悟史は、やりとげるために、彼女達の心の中に「良い人物」として入り込んでいるのである。彼を愛した女もいた。愛する男の手で、自分を一番愛した男のやった犯行の仇で、殺されるとも知らずに死んでゆく。許される行為ではない。
美しく描くべきでもない。路木悟史の時計は婚約者が殺されて待ち合わせに来れなかったあの年の5月31日午後8時で、止まっている。今、冷酷な復讐を遂げようとしている男は、路木悟史が生きている理由、憎悪だけの殺人鬼である。彼の心に2人の路木悟史がいる。憎悪にまみれた路木悟史はまた、裁かれるべきである。彼の婚約者を殺した犯人と同じように。
悲劇は、路木悟史が純粋すぎたこと?路木悟史が彼女を愛しすぎた事?路木悟史が待つ事に慣れすぎた事?他に誰も頼らずに生きてきて、仲間を持たなかった事?精神が破綻してしまった事?「一番愛する者を奪われる悲しみ、恐怖」それを味わわせる事でなく、ただ罪を償わせるために時間をかけ、待つ事が、できていれば。
非人間的に、自分の地位や名誉や生活を守るために、関係無い人の命を奪っておいて、のうのうと生きている人間。しかも、地位や名誉があるからこそ、その犯行を隠匿できて。被害者の遺族はどれだけ償われても還らない命にどうしようもない葛藤をするのに、償いもせず、罪すら認めず。「どんな気持ちかわからせる」方法しか選べなかった路木悟史も同じ罪を重ねる。全ての犯行後、自殺を選んでも、それは償いにはならないのに。
やりきれない思いが残る。最終回は意外な顛末を迎える。あえていうなら、報いと新たな悲劇との混沌の中、これが、せめてものせめてもの、奇跡的な幸福的幕。過去の恨みに生きた男の物語に、未来、という言葉が残されるのかもしれない。
とにかく、東儀さんの音楽は、素晴らしい。このドラマは再々放送であるが、この間、ずっと私の心に余韻としてドラマを残してくれている。そして、藤木直人の好演が、キレイで誠実でいい人な路木悟史と、彼の清濁の「濁」の部分を内包したキレイな虚像が、自分の婚約者を殺した人間達の「一番愛する者」を自分に惹かれさせるという、一種、色気を感じさせることができた事とで、この復讐を可能にしてしまったといえるのではないだろうか。
路木悟史を演じたことは、藤木直人にどういう影響をもたらしたか知ることは出来ない。ただ、「喪服のランデヴー」の成功の一端に、彼もいる。最終回は見逃さないで!!
同じナゾの多いキャラでも路木悟史に比べれば、フサちゃんなんて、フサちゃん、フサちゃん、フサちゃーーん!!と、言ってられるだけ、見ていてとっても楽なのだ。妙に色気はあるから、キレイなだけじゃなさそうだけどね。
フジッキー話のはずが、ちょっと「喪服のランデヴー」は、力はいってしまった。
01月29日(火)
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