ID:32686
兼松孝行の日々つれづれ
by 兼松孝行
[159290hit]

■IgA腎症
本症発見時の症状は、日本では偶然の機会に蛋白尿・血尿が発見されるもの(chance prote‐inuria and/or hematuria)が大多数を占めるが、諸外国ではこの比率が低く、肉眼的血尿や浮腫などの症候性所見の比率が本邦よりも高い。この差異は腎生検施行対象症例の選択方針が内外で異なるためと考えられており、ヨーロッパ諸国の中でも腎生検を比較的活発に行っている地域では本症の発現頻度が高いこととともに、無症候性蛋白尿・血尿の比率が高くなっている。

また患者の男女比についても日本はその比率が諸外国よりも低いことが知られているが、これも腎生検対象症例の選択基準の相違がその一因と考えられている。本症の臨床検査所見や腎生検標本の病理所見については内外の間に本質的な違いはないが、組織病変が比較的軽度な症例が日本で多く認められていることも腎生検に対する方針に起因するものと思われる。しかしながら本症の確定診断には腎生検が不可欠であるという点については、内外ともに一致した見解が得られている。

予後判定については腎生検光顕標本における組織障害度が最も信頼できる指針であるということは内外で異論がなく、その他の臨床指標の中で腎生検時の高血圧、腎機能低下、高度蛋白尿、患者の高年齢などが予後判定上有用であることも内外に共通した認識である。ただし一部の外国では男性の方が女性より予後不良であるという報告や、肉眼的血尿を呈した症例は比較的に予後良好であるという説があるが、これらの知見は日本では確認されていない。本症の治療については根本的な治療法が得られていないために、内外ともに対症療法が行われている。

その中で症例に即した生活規制に加えて抗血小板剤の長期投与と降圧剤による血圧コントロールとが基本であることは世界的に共通した方針である。その他諸外国の一部では免疫抑制剤と副腎皮質ステロイド剤を含むカクテル療法や血漿交換療法などが試みられ、また過去にはIgA産生抑制療法なども検討されたことがあるが、いずれも我が国においては一般的な治療法とは考えられていない。

6 IgA腎症の今後の動向
急性及び慢性糸球体腎炎の一部には、近年我が国において減少傾向が認められているものもあるが、IgA腎症についてはその発生頻度はほぼ横這いで推移しているということが国内主要施設間での共通した認識である。今後は全国的な症例追跡によって予後判定と治療法の検討を行うとともに、本症の発症機序解明による特異的療法の開発が期待されている。

08月07日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る