ID:26167
マシンガン★リーク
by 六実
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■王家に捧ぐマシンガン
 そんなアイーダの前に現れたラダメス。恋に落ちる云々のラブロマンスはさておいて(置いちゃうのか!)、アイーダにとってラダメスとの出会いは一つの「新しい概念」との出会いであったと思うんです。「祖国を捨てて見知らぬ国へ漕ぎ出す」のはロマンチックなラブロマンスというより「祖国を捨てる」というそれまで無かった概念だったと。「祖国を捨てる」と言ったラダメスですら祖国への執着はあったわけですから、この時代に「祖国を捨てる」事がものすごく「ありえない」事だったのではないかと思います。今風に言うと「祖国を捨てちゃうなんて、ラダメス先輩すごく新しい!」です(馬鹿丸出し)。
 「国と国が争い、戦いは新たな戦いをうむだけ」ならば、その国と国ではない「見知らぬ国」へ、戦いのない新たな「見知らぬ国」へ。自分の信念を貫くためには国を捨てるしかない。アイーダが自分の信念に対して最初に出した結論なのではないかと。本公演の頃は恋をして女になったアイーダが自分勝手に祖国を捨てる(自分だけがよければそれでいい)ぐらいに思えていたんですが、そういうのが少しなくなりました。確かに、身勝手なことかもしれない。けれどもそれが身勝手に見えるのはそれが「新しい」事であるから。いつだって一番最初の事は困難を伴うものなのだから、人々の理解を得られないことなのだから。
 何よりも信念を訴えるだけでどうにも進めなかったアイーダが、ようやくその苦しい停滞から逃れらると思ったら、その為に多くのものを失っていこうとしているのだと思ったら、それもまた「正しい」と思えてきたんです。本公演の時は信念を貫くために全力疾走していたアイーダに「強さ」を感じていたのですが、今回は信念がある故に(その信念、あるいは「終わる、終わらない」という真実に気付いてしまったが故に)惑い苦しむ「弱さ」と受け止めるようになりました。
 けれどもそのラダメス先輩の「国を捨てる?すごいアイデア!」はやっぱり成し遂げることができなかった。「エチオピア」「エジプト」という「世界」の概念は強く、そしてまだそれを超える『世界』という概念が生まれていない。「祖国を捨てる」という新しい概念は現実とはならなかった。
 「戦いは新たな戦いを生むだけ」と訴え続けたアイーダの想いは、やはり「祖国に、大地に帰りたい」であったと思うんです。そうやって狂おしいほどに訴えながら彷徨うアイーダは、帰るべきところをずっと探しているかのように思えました。
 「見知らぬ国」へも帰ることが叶わなかったアイーダは、最後の最後で帰るべき場所をみつける。それがラダメスだったんじゃないかと。見知らぬ国を求めて祖国を捨てるのではなく、祖国でも、大地でもない、ラダメスの中に帰る大地を見出す。愛しているから、と。その時初めて2人の間で「エチオピア」「エジプト」という世界が無くなって『世界』という概念が生まれたんじゃないかと。
 それまでの世界とは「エチオピア」であり「エジプト」であった。けれども最後の最後に、必要なのは「祖国」ではなく、愛。そして愛し合う人々が暮らせる『世界』。
 「大地の国、エチオピア」のアイーダにとっては、争いは大地を奪い合う事でしかない。けれども大切なのは、「大地」ではなく、愛。愛する事に「エチオピア」も「エジプト」もない。
 2人が祈ろうとしている世界は「エチオピア」でも「エジプト」でもない『世界』。そんな『世界』に2人は『平和』を求む。アイーダの「戦いは新たな戦いを生むだけ」という信念は、『世界の平和を祈る』という新しい概念が答えとなったのではないかと思ったんです。
 アイーダとラダメス、ふたりが新たに築いた『世界』という概念。
 次の歴史への、道しるべ。
 ふたりの愛が、この世界に新しい『世界』を生みだした。


(むっさんむっさん、大丈夫か?)(自分の中で繋がっているか?)(だ、大丈夫だって!)




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02月15日(火)
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