ID:26167
マシンガン★リーク
by 六実
[826293hit]

■ななどあメモその1
 このダンスを「ヤったかヤらないか」でずいぶん物議を醸したのですが、わたしは「ヤってない派」です(そんな派閥あるの?)(笑)
 ユディットは官能的な表情を浮かべるものの、なんだかよくわかっていないような顔をしているように見えたんですよね。
 何よりも前段で「(食べることが)快楽」を罪としていたユディットが、ここで流されているのは「快楽」なんだろうか。それをわからないで流されているような。
 そもそも「快楽」がなんたるかを経験していない(処女)なんじゃないかなぁ。

 『肉欲』とのダンスを受けるユディットは、快楽を求めたというより、『肉欲』と執事が言い争っているのを止める為、と某嬢が言っていて、ああなるほどな、と思った次第。それもユディット自身の欲ではなくて。
 もう一つはこの場面が終わった後のユディットが落ち着いていたこと。そこもあって、わたしは「ヤってない派」だなぁと。

 で、私は「肉欲不能説」が一番しっくりきました。もっと言うとその罪故に「ちょんぎられていた」と(こら!)
 『肉欲』のソレが、当初はエロスよりバイオレンスと感じたし、後半はなぜか「やさしくなった」と思ったんですね。やさしくなったというか、なんか勢いがなくなったというか。ユディットをリフトする直前に(リフトの都合上)そのドレスの裾をばさっと足蹴にするところがあったのですが、後半はそこがふつうに「避ける」だけになっていて。そんなところも含めて全体的に。それがかえってフェティシズムっぽくて。

 それで最終的に『肉欲』にとってユディットは「宝」だったんじゃないかな、と思った次第です。
 だって、ここは宝物庫。からっぽの宝物庫にきた「パーフェクトバランス」な宝。宝を愛でる、手入れする。『肉欲』の愛撫がそんな風にだんだん見えてきたんですよね。性の対象ではないけれど、執着はしている。そんな感じかなぁ。
 それはそれで、ちょっと気持ち悪くて、ちょっといい(え?)。


[強欲]

 三つ目の扉は金庫。
 そこにいるのは、金に目がくらんで冤罪を起こして無罪を有罪とした弁護士。罰として死ぬまで札束を数えさせられる。


 初見の時には正直「ずいぶんいい加減な場面だなぁ」と思ったんですよね(笑)。役者の技量に頼りっぱなしのような、放り投げた場面のような(スズカツめ!)(笑)
 でも演者の陰山さんの熱演がすごくて、ほんとあのほったらかし(と私は思った)脚本でここまでやるというのに、最後まで引き込まれてました。
 そうして場面の最後にかぶる公爵の、
「愚者こそ人間らしく、いとおしさを感じる」
 というモノローグに、日に日にテンションアップしていく『強欲』の愚者っぷりが重なって、なんだかおかしくて、そして哀れに感じて、うっかり涙ぐんでしまった日も。


 この場面を下手から初めて見たときに驚いたのが、ユディットが明らかに『強欲』に嫌悪を表していたことなんですよね。
 優秀な弁護士が金の為に冤罪を起こす、というのはユディットの実父を死刑にした事件(後述)を彷彿とさせているのは明らかな訳ではありますが。
 命が終わるまで札束を数えさせられるという罰に「さもありなん」という顔をしていたユディット。いっそ冷酷と言ってもいいような表情を浮かべて。
 最後、部屋を去るときに『強欲』を何か汚れたものでも見るような目で、近づくものいやといように、スカートを翻していたユディット。

 そこまでは翻弄される哀れな羊飼いの娘だと思っていたのに、そこで「あれ」と思ったわけです。
 聖書の教えに照らし合わせて断罪をしていく、そんな激しさが垣間見えたような気がして。


 ところで実父の冤罪事件を彷彿とさせる『強欲』と、義理の父のキャストが同じ陰山さん、ていうのは、ひとつのメタファだと思うのですが、「ユディットを強姦未遂しようとした父」が『肉欲』ではなく『強欲』っていうのも深いなと思いました。まるでユディットを所有物と思っているように、そうされて当然とでも言うように、押し倒したんじゃないかと思っています。所有欲というか、支配欲というか。

[5]続きを読む

06月10日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る