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マシンガン★リーク
by 六実
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■過保護の仔猫のように
その机にラル様がつっぷすようにして眠っていた。
「……ラル様?」
部屋のなかはとてもちらかっていた。床に放り出された本は広げられた形のままで、丸められた紙がいくつも転がっている、机の上には愛用のタイプライター、その周りのちらばったメモは走り書きだらけ、その周りには食べっぱなしの汚れたままのお皿、飲みかけのコーヒーが入ったカップ……ええっと、こういうのはなんて言うのかしら、修羅場?
そうか、撮影が押しているのはスポンサーからクレームが入って、撮りなおしが入っているからって言っていたっけ。ラル様は脚本も書いているから、だからこうして……。
「……」
それにしてもひどい有様だった。まるでガラクタのようにごちゃごちゃした中で、ラル様は眠っていた。あんまり良く眠っていたから、起こさないようにそおっと顔を覗き込むと、しばらく剃ってないと言わんばかりに無精ひげが生えていた。髪の毛はぐちゃぐちゃ、お風呂も入っていないんだろうなぁ、なんか、ちょっと変な匂いまでする。疲れているせいか、いつもよりずっと大人に、というか歳老いて見えた。
これは本当にラル様なんだろうか。
なんかカッコ悪い。
そんなの、おかしいじゃない?
だって、ラル様はヒーローなのに。
「……」
ぐちゃぐちゃの、ラル様の髪の毛にそっと触れる。それを整えるように、指を入れて梳く。
「……」
思わず、笑った。
だって、こんなの、ヒーローじゃない。
ちっともかっこよくない。
ラル様はわたしを犬から守ってくれたヒーローなのに
ラル様は犬を飼っている
そんなの、おかしいじゃない?
でも一番おかしいのはわたし自身だった。
だって、そんなのおかしいじゃない?
こんなにカッコわるいラル様なのに、
なんだかとても、たいせつなものに思えてきた。
大好きな、大好きな。ヒーローじゃなくても、わたしの。
「う……」
不意に彼が身じろいだ。
ふと思い出して慌ててジョニーから預かったひざ掛けを彼の肩にかけた。……うん、これはわたしの仕事だ。わたしの。
それもおかしかった。だってジョニーはわたしをいじめてじゃまするはずでしょ?なのに。
「……ミルドレット?」
むっくりと、身体を起こし、寝ぼけ眼でわたしを見る。わたしはそれがおかしくて、今度は声に出して笑ってしまった。彼も、つられるように笑った。
「夢を見ていたんだ。ちょうど、君の夢を」
「え?」
「あの時の夢、俺もレイもミルドレットもちっちゃくて。……あの時ミルドレットに犬がとびついたけれど、あの犬は、尻尾を振っていたし、犬は君があげた叫び声で驚いてすぐに逃げて、倒れた君をレイが助け起こして……なあ、それで思い出したんだが、あの時俺が君を助けた訳じゃなくて……」
わたしは彼に顔を近づけた。彼がきょとんと、驚く。
そんなこと、もうどうでも良かった。
その夢が事実でも記憶のすり違えでも、わたしを助けたのが彼じゃなかったとしても、
ラルフがヒーローじゃなかったとしても。
それでもわたしは彼が好きなのだと、
それはちっともおかしなことじゃない。
「……どうでもいいか」
おんなじ事を、彼が言ってくれた。きっと彼もまた、それでもわたしを好きでいてくれているのだと、それが嬉しかった。
わたしは彼の膝の上にちょこんと座った。彼の首筋に腕を回して、そして頬を摺り寄せた。彼が少し慌てた。
「お、おい。ミルドレット、俺しばらくシャワー浴びてな」
わたしは返事をしなかった。そしたら彼はぎゅうっとわたしを抱きしめてくれた。
++++++++++
忠犬(ジョニー)とミルドレット(犬嫌い)のネタはちゃらさんからパクりました(笑)。最初にそれを言われたときに「うまい!座布団一枚!」って思ったんだよね。
もうちょっと、もうちょっと書きたいのですが、ちょっと最近金平糖釜の調子がよくなくてね……自分でもちょっとすっきりしない書き味なのです。でも書くんですが。
02月09日(金)
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