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マシンガン★リーク
by 六実
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私はいつもそんな冗談に「隊長!」と色をなしたり、慌てたりしたのだけれど、けれどもその言葉の意味を隊長も自分もわかりすぎるぐらいにわかっていたから、だからそれを笑うことができた。もちろん、隊長も笑った。わかっているのだ、隊長が民衆に味方をして革命に投じてゆくのも、わかっているのだ、私は貴族だから革命を受け止める立場にいることも。
隊長は言った。
「王妃様を……国王様を、」
ただ、それだけが隊長の心残りなのだろう。そしてそれを受け止めるのも、私の仕事だった。最後の命令。いや最初で最後の隊長の懇願、隊長の願い。私は黙って頷いた。隊長は私の手を握った。その柔らかな感触に、一瞬だけ抱きしめたい衝動にかられたが、それはすでに過去に葬ってきた感情だ。
「ありがとう」
その言葉の前の「今まで」という言葉は、聞こえないことにした。聞かなかった事にした。最初で最後の「反逆」だった。
隊長の遺志を受け、私は国王ご一家の為に奔走した。そして今、最後の望みをかけて、フェルゼン伯に救いを求めるために、遠路はるばるこの国へ来た。
陽射しは眩しく、花は咲き乱れ、人々はこんなに明るいのに。
何故、私はここにいるのだろうか。いやそれははっきりとわかっている。国王ご一家の為、祖国フランスのため、何よりも隊長の遺志が私の手の中にある。それなのに、何故そんな事を思うのか。
「旅の人、どうぞ」
私の周りを笑いながら走り抜けていった、民族衣装をまとった祭りの人々。その中のひとりが、私に花を差し出した。
「春はもうきていますよ」
ふと、その花と同じ花が咲き乱れる木が見えた。薄い紫色のその花が、鮮やかな緑に競うように咲いていた。その木の元に、やわらかな木漏れ日があった。その陽だまりに、私はどうしても彼を思い出さずにはいられなかった。そして、そこに陽だまりがあるのにそこに彼女はいないのだ。かの美しい人は、もう、いないのだ。
ああ、そうか。
私の想いは過去に葬られたのではない。あの夏の日の朝にあの森にいたことも、この春盛りの異国にいることも、すべて。過去に葬られた想いではないのだ。かの人が私に遺したものは、その遺志だけではなかった。
私はその陽だまりにそっと近づいた。あたたかなやさしいひだまり。
私はそこにはもう入り込めないけれど。
そのひだまりに、手にしていた紫の花を手向けた。
―心に決めたあの人にあの人に
胸の想いを、届けよう
―――――――――
昨日のジェローデル語りを総括するとこうなります(ええ?)。
椎ドレバージョンでお願いします(わかりやすいたとえだな、君)。
04月03日(月)
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