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武ニュースDiary
by あさかぜ
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■「南方人物周刊2017-4-24」 金城武の隠れ身の術・3
ミスターはてな

ピーター・チャンが、「如果・愛」で、初めて自分の映画に
金城武の出演を依頼したとき、
彼は驚き、身に余る光栄だというふうだった。
「とんでもない、なんでぼくに?」
しかし、喜びは喜びとして、彼はやはりお断りをした。

(この話をしたとき)彼は私に礼儀正しく注釈を入れた。
「謝絶です、拒絶じゃなく」
”謝絶“の理由を、彼はもうはっきり覚えていない。
覚えているのは、今も解決していない戸惑いだ。
つまり、主人公の林見東(リン・ジエンドン)はどうしてあんなにまで
孫納(スン・ナー)のことを愛しているのか、ということである。

ピーター・チャンは、「愛に理由はないんだよ」と何度も答えた。
猛反撃で攻め立てたことさえある。
「君は、訳も分からず好きになった人っていないのか?
その人のこと、全部わかってるの?
何で好きなのか、みんなわかっていたのかい?」
金城武は口ごもりながら、
「おっしゃること、わかりますよ、でも、ぼくが心配してるのは、
スクリーンではそれがわかってもらえないのじゃないかと」と言った。

2回目のオファーは「投名状(ウォーロード)だったが、これも謝絶された。
ピーター・チャンは一度ならず日本に飛んで、説得しようとした。
その最後のとき、金城武は彼を高級なカフェに連れていった。
以前ピータ・チャンが日本に行った折、
金城武に最高の料理をご馳走したことがあり、
金城武がそのお返しに、別の店にピータ・チャンを連れていき、
ここも同じくらい美味しいのだと言ったが、
ピーター・チャンが勘定書きを見たら、遥かに安かった。

今回、ピーター・チャンは、これはまずい、と思った。
彼の方からこんないいカフェに連れてくるだなんて、
おそらく断るつもりだろうと考えたからだ。
ところが食事が終わると、なんと彼は承諾したのである。

この戦争映画の大作の撮影は、極めて苦しいものだった。
ピーター・チャンが各方面に対応しなくてはならず、
散々な目にあっているというのに、金城武はやはり彼の傍で
「この論理はおかしい」と言っているのだ。

ピーター・チャンは内心では、
「私があの2人の兄貴たちに対応しているのが見えないのか、
こんなときに、論理がどうのこうの、言いに来るなんて!」と、うめいていたが、
口では「映画が面白いのは、論理がないからさ」と言った。

その後、長いこと、撮影現場でピーター・チャンが
他の俳優に演技を付けているのを目にした金城武は、飛び出していっては、
「話は聞かなくてもいいよ、ピーター監督の映画には論理はないと、
監督自身が言っていたからね」
と一太刀浴びせていたらしい。

「投名状」の現場はほこりだらけで、みな、ずっと咳をしていた。
ピーター・チャンは特にひどく、心配事も多くて病気になってしまい、
香港に治療に戻らざるを得なくなった。
金城武は監督のことを心配し、論理への疑問は飲み込んで、口にしなくなった。
その中国医学の知識から、
「悩みは肺を侵すから、悩みを増やすようなことはやめなくては」と考えたのだった。

3作目の「武侠(捜査官X)」になると、
金城武は脚本を読み終え、こう返事をした。
「徐百九という人物を削った方が作品がよくなりますね」
徐百九こそ、ピーター・チャンが彼にオファーした役であった。

「彼がよく私の映画に出るのは、
私を特別に信頼してくれているということだろうか?
私は、私が特別忍耐心があるからだと思う。
なぜなら、彼は何でも断る。誰がオファーしても。
断られた監督は大勢いる。それも何度も断るんだ。
もう一度考え直して、とずっと言い続け、待つ。
すると、やっと彼が軟化する」
インタビュー番組でピーター・チャンはこう語っている。

4度目にピーター・チャンが金城武にオファーしたのは、
大作ではない、ラブ・コメディ「喜歓你(恋するシェフの最強レシピ)」で、
一見、俳優の気をそれほどそそるタイプの作品ではなかった。

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06月25日(木)
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