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武ニュースDiary
by あさかぜ
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■雑誌記事(智族GQ7月号B)
これで終わり。


金城武は中国語の読み書きを正式に学んだことがない。
自分で本を読み、少しずつじっくりと取り組んできたのだ。
今でも中国語の脚本を読むのは一苦労である。

彼は自分がどのくらい努力したかはめったに口にしない。
ハーフであり、いろいろな場所で暮らしてきたことから、人は往々にして、
彼がどんな言語を喋れても当然と錯覚してしまいがちだ。
実際は、だいぶ前、仕事で香港に行ったときは、広東語は一言もしゃべれなかった。
数ヵ月後、一緒に行ったスタッフはいまだに「聞いてわかるが話せない」状態だったが、
彼はもう広東語の台詞を話せるようになっていた。

今回、雲南で「武侠」を撮影したが、李小冉が思わず口にしなかったら、
一行が毒虫にやられたことなど、誰も知らないままだったろう。
四川方言で台詞を言うのは、言ってみれば遊びのようだが、
彼は何倍もの時間をかけて、発音がそれぞれ違うのを整理し、
1字1字暗記をしなければならなかった。
彼はいつも自分はみんなより良くしてもらっていると思っている。
――宿泊条件まで他の人よりよいのに、
どうして、大変だなどと、平気で口に出せるだろう?

彼は自分の私生活を明らかにするのを好まない。
何年も前から取材はめったに受けない。
それは自分が何か他の人と違っているとは思わないからだ。
もちろん、外に出るのもちょっと厄介だ。
アメリカのある雑誌が以前、東京の街中で彼の写真を撮ろうとしたことがある。
2分も経たないうちに、怖ろしいほどの人だかりができてしまった。

彼はスポーツが好きで、少年時代は学校のあらゆる球技チームのメンバーだった。
面倒を避けるため、今はたまにダイビングをするぐらいである。
ときに、こっそりと渋谷にラーメンを食べに行ったり、
誰も彼のことを知らないところに旅行に行ったり、
のんびりと映画館で映画を見ることもある。
ほとんどは、家にいて、夜中に、ためこんだDVDをひっぱり出すのだ。
――あれ、「風と共に去りぬ」はこんなに長かったのか、下巻もあるじゃないか。

友達の多くとは、中学時代から今も付き合いが続いている。
ニューヨークに行ったとき、17年前に別れたきりの同級生、正熙と再会した。
顔を合わせるや、しっかりと正熙を抱き締めたが、
その親しさに正熙は意外さと、温かさを感じた。
金城武は後で1冊のセルフ・ヘルプ関係の本を送ってきた。
彼は哲学と形而上学の本にとても興味を持っているのだと、正熙は言う。
空っぽの華やかな世界より、金城武は自分の内面の探求の方に熱心だ。
だから、彼は外の世界に対する欲求は低いが、
人と人の間の情は格別に大事にするのである。

彼も恐れや不安や矛盾を感じる。
いろんな事情がありすぎるから、訳は話さないが。
この世は人を落ち込ませることが多く、天災あり人災あり、絶えず移ろってやまない。
3月、金城武は仕事で上海にいた。
日本で地震があったと聞いたが、それほど重くは受け止めなかった。
地震が頻発する国では、すぐニュースにはならないのだ。
ホテルに戻ってテレビをつけ、呆然とした。

彼は、自分に超能力があって、自分が演じてきたヒーローたちのように、
民を助け、希望を与えられたらと思うことがある。
だが、またこうも思う。
地球は回転している。地球は呼吸が必要で、自身の周波数がある。
地震や水害はひょっとしたら、
地球がくしゃみをするのを抑えた結果にすぎないのではないか。
自然を恨んで何の意味があるだろう?
できるだけのことをして、天命に安んじる方がいいのではないだろうか?

今、この世界と命そのものについて、
昔より理解は進んだのかどうか、彼も知らない。
だが、全ては循環往復しており、たとえ無常であっても、絶えず進化し、
くじけずに進んでいかねばならないということは、彼はよく知っている。  (完)


   BBS   ネタバレDiary  23:45
08月15日(月)
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