ID:23473
武ニュースDiary
by あさかぜ
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■「K−20 怪人二十面相・伝」大陸で公開●GQ取材記C
今月24日(明後日か!)からだそうです。
なかなかなポスターが2種類お目見え → こちら
(1枚だけだけど、文字の載ってないのはここに)



●GQ取材記C    23:00

日本

半分日本人の金城武が初めて日本の土を踏んだのは、18歳のときである。

「覚えているのは、成田空港に到着して飛行機を降りたとき、
大きなロビーに歓迎の看板があり、日本語でこう書かれているのが
目に飛び込んできたことです――『おかえりなさい』って」
と金城武は振り返る。
この、日本国民を出迎える看板は、今も成田空港にある。
毎日家族が帰宅するたび交わされる、
「ただいま」「おかえりなさい」の挨拶同様、「家に帰る」という言葉は
日本人の集団としての感情と記憶の、最も日常的で素朴な部分であるが、
そのとき金城武はその記憶を共有することができず、
一瞬大きな距離を感じた――
「『おかえりなさい』というけど、ぼくは帰ってきたの? 初めて来たのに」

「渋谷でタバコを吸っていても、誰も自分を知る人がいないのは、とても落ち着きました。
電車に乗ったけど、全然わからない。
改札で、切符を改札機に入れたまま行ってしまい、
『切符、取り忘れてますよ!』とよその人が追いかけてきました。
そこで学んで賢くなった気がしたのに、今度は出るとき、
切符を入れて、ぼうっと待っていたら切符が出てこない。
駅員さんに『どうして、そこにいるの? 切符は出てこないんだよ』と言われた。
恥ずかしいったら――日本人なのに電車の乗り方がわからないなんて!」
金城武はタバコを置き、そのときの自分の様子をまねて、
駅でのきまり悪い対話を日本語で再現してみせる。
「しまいには中国語だけで話すようにしました。笑われたくなかったから」
昔日の恥ずかしいエピソードを夢中で語る。
昔は1つのつぼを落として割り、すごく惜しがったのに、
今は完膚なきまでたたきつけて、逆に面白がろうとするような感じに思える。

「2年前にも横浜駅に行ったんですが、やっぱり路線がわからなくて、
いろいろ乗り換えているうちに、途中で間違った線に乗ってしまいました」
と彼は言った。
「そのときは友達と飲みに行く約束をしていたんです。
車は運転しちゃいけないし、タクシーも高いから」
「タクシー代が高い?」と私は聞き返した。
彼は笑った。
「日本はいいよ、電車の中では他人のことを見ないもの……
電車に乗るのは冒険のようだね」

半分日本人であり、台湾で日本の正式な学校教育を受けているといっても、
日本での撮影には、やはりある目に見えないプレッシャーを感じる。
このプレッシャーは、「文化の違いから来ている」と彼は考える。

「日本は割合――みんながこうするから、自分もこうする、という感じ。
日本の撮影現場では、誰もしゃべらないし、説明もしないけれど、
何をすべきかみんな知っている――これが礼儀なんです。
特にこういう礼儀正しさも、文化から来る、目に見えないものだと思います。
多分中国の監督は名声が比較的目立つけど、日本では目立つのは絶対監督じゃない。
作品であり、映画会社であって、みんなあるモデルに沿って仕事をするんです」

彼は、敬語が下手なせいで、人を怒らせたことがあると打ち明ける。
彼が初めてかすかな不満の気持ちを漏らした。
あたかも、いやな目にあった記憶のスイッチに触れてしまったように。
「日本で敬語を使えなかったら、たいていこう言われますね、
『その態度はなんだ?』。相手によっては――」
言葉を切り、単語を探した。
「不愉快がる」
「そんなとき、あなたはどう思うの」 私は聞いた。
「どうかしてますよ!」
と、彼は眉をひそめる。いまだにわだかまっていたかのような反撃ぶりだ。
その繊細で聡明な顔が、不快さをあらわにした。
「だって、わざとじゃないんだから」

「今、特に日本では、できるだけ自分から先に挨拶をするようにしてますよ。
ぼくの日本語の敬語はあまりうまくないので、

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02月22日(月)
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