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武ニュースDiary
by あさかぜ
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■チャン・イーモウと「LOVERS」B
これでおしまいです。

青梅煮酒話埋伏――「LOVERS」評B

最も良かったのは、その金城武だ。

金城武という人だが、私は大阪で、ある中国人の女性歌手と知り合ったが、
その若い女性が、以前金城武と仕事をしたことがあった。
彼女は、金城武の一番の特徴を、真面目さと謙虚さだと評していた。
それは、映画から見てとれる。

金城武は、非常に聞き分けのよい俳優のようだ。
映画の初めから、彼の演技は、まるでチャン・イーモウと
以心伝心であるように見える。
そら、賑やかな妓楼と、小妹が触る<Vーンで、
映画館中の観客が笑っていたけれど、よくよく見ると、
金城武は実に役に集中し、入り込んで演じている。
この集中は、私の理解するところでは、すなわち監督への信頼と尊重であり、
また、逆に自分の仕事の尊重でもある。
外国人として、チャン・イーモウと素晴らしいコンビを組めるということは、
そのまじめさと謙虚さがなかったら、難しい。

だが、もしそうであるなら、
金城武は自分の点を稼ぐことができたというに過ぎない。
彼がチャン・イーモウに点を上乗せすることのできた原因は、
映画を見た後、つぶさに考えれば、金捕頭が、
この映画で事実上唯一、性格が印象に残る人物だということにある。
金城武は監督の要求を満たすと同時に、
彼自身、この役をはっきりと理解していたのである。

この点は、チャン・イーモウの風格からは、おそらくやや逸脱したものなのだ。
チャン・イーモウの風格とは、俳優は巨大な風景の中の一部分に過ぎず、
美と調和と人物描写は、監督のカメラが決めることで、
俳優がすることではないというものだ。

ところがイーモウは、金城武に対し、ちょっと肩入れをしているところがある。
金捕頭をとらえた画面からは、
監督が俳優と妥協をした痕跡がしばしば見てとれるのだ。
チャン・イーモウと金城武は、
共同でこの人物像を作り上げたのだと言うべきだろう。。

チャン・イーモウは、なぜ自ら金城武を手助けしてやったのか?
風格が全編に影響を与え切れなかったというのが1つの原因である。
もう1つの原因は、多分彼が、
自分自身がかつて演じた蒙天放(「古井戸」の主人公)を
思い出したからではないかと私は思う。

彼、イーモウは、そのとき、監督に対し、もっと徹底的に反抗していた。
――あるいは、あの香港の監督など眼中になかったと言ってもいい。
今、しっかりした自分の考えを持つ金捕頭が目の前に現われたとき、
もしかしたら、イーモウの心には
優れた者同士が持つ共感のようなものがあったのではなかろうか。

この、互いに優れた似た者同士の尊重という点において、
彼に5点を加えるべきとなる。

実は、チャン・イーモウはもっと高い点数をとれたのである。
だがいかんせん、彼はあの理想の彼女を手に入れることができなかった。
尾っぽの禿げた鶏のような結末を見れば、
一瞬、チャン・イーモウの心中のあの痛みが感じとれる。
ひょっとして、彼は身を切り捨ててでも、
不満足なもので埋めることは、よしとしなかったのかもしれない。

もし、大姐の代役を立てることができたなら、
映画の後半部分はもっとずっと素晴らしいものになったかもしれない。

このあわただしいラストは、チャン・イーモウの永遠の追悼ではないだろうか。
心がきゅっと痛む。永遠のアニタ・ムイよ!

(「LOVERS」に出演するはずだった大姐アニタ・ムイは、
病が重く撮影に参加できないままなくなったと言われている。
アニタ・ムイを失い、チャン・イーモウは、
きっぱりと脚本を書き換えて彼女がやるはずだった役を捨て、
代役を置かないことで、アニタ・ムイへの心からの追悼を表した。
もしかすると、この報道がアニタファンである私に、
より良い点数をチャン・イーモウにつけさせたのかもしれない
(薩蘇的BLOG 2006.2.17)


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02月25日(土)
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