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武ニュースDiary
by あさかぜ
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■金城武という都市B
心の内
この都市のただなかで、人は数え切れないほどの役を演じている。
ある者は幸せで、明るく、情熱的な生活を、
またある者は悲しく、暗く、退廃的な生活を。
そのすべてを金城武は演じてきた。
だが、この謎のような男の内側に、真に踏み込むことはだれもできない。
1人の人間の心の内に近づくことは、
入り組んだ路地を歩むよりもはるかに苦難に満ちた作業だ。
その心の内は柔らかなのだろうか?
風を恐れるほどに? 雨を怖がるほどに?
自分を閉ざしている? 人の手も借りず?
なら、1番柔らかく、1番深い部分は、彼自身しかたどりつけないようだ。
金城武は、演技と映画が別物の人間のようである。
ちょうど、にわか雨がせわしない数多の窓辺に降り注ぎ、
数多の寂しい者たちがそれを眺めるように。
雨があがると、遠方より来た者は、また遠方へと去っていくが、
ひとり金城武だけは、絶え間なく人の行き交う心の広場に、
心をゆさぶったその姿を1つ1つ刻み込んでいく。
平和
彼は序列争いにきゅうきゅうとする人間ではないし、
愛想を振りまく人間でもない。栄華や富裕を求めるなど考えたこともない。
彼自身の言葉を借りよう。
「本当はぼくはものぐさで、
人に『どうしてこれをやらないのか』と言われるのが嫌い。
だって、他人がしたことを、
金城武もしなくちゃならないということはないのだから、
他人の基準でぼくを判断することはできないでしょう」
20歳のとき、彼はいつも監督になりたいと思っていた。
今は照明や撮影など、裏方の仕事にも大きな興味を示すけれども、
可能なら、俳優を続けたいと望んでいる。
出演料にはあまり関心を示さない。
「どうせ事務所がみんなうまくやってくれるから。
大事なのは役とストーリー。
今度の『LOVERS』で演技に少し自信ができた。
これからも武侠物はやると思う」
彼の憂いを含んだ表情のポスター、テレビ番組、巨大な看板広告が、
街中に寂しさを伝えている。
にぎわう異郷の都市が生み出し続ける、いつまでも去らぬ寂しさを、
手も足も出ない寂しさを、
そしてまた、忘れ去られた異郷の心を。
金城武は、一言も発さずとも、やはり闇のように寂しい。
愛情
「ターンレフト ターンライト」に金城武を選んだ理由について、
監督のジョニー・トーは、
彼には社会との間に深い隔絶があるからだと言っている。
この距離感は、あたかもビルの森に1本の木≠ェあって、とても高く、
寂しさにとらわれるとき、その広い窓枠に腰かけ、
大きなガラスごしに、遥か彼方をうねる大海を眺めるのに似ている。
街を去ることのできる者は多い。
だが、家庭からは離れられない。
親しい人々から離れられない。言葉と環境から離れられない。
そうでないと寂しいから。金城武は寂しがらない。
よしんば誰かに恋したとしても、それはまたもう1つの気持ち。
「愛は偉大だと思う。男女間の愛だろうと、他のどんな愛だろうと。
今、あなたは恋をしているかもしれない。
結婚して、愛する人にすべてを捧げるかもしれない。
どれもとても偉大なことだ。
子どものころの恋は、今では多分こっけいに見える。
当時のぼくはと言えば、すべてを差し出した。
けれど、30や40になれば、差し出せる程度もまた、
同じではないのじゃなかろうか」 (完)
(女性大世界 2004年9月号)
藍マミーさんが、この記事のグラビアをスキャンして送ってくださいました。
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BBS 21:20
01月16日(日)
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