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武ニュースDiary
by あさかぜ
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■お礼●雑誌記事(ELLE MEN 9月号@)●新作のニュース、だが…●更新●更新2
このはっきりとした態度が監督ピーター・チャンに地団太を踏ませる。
私のこんなにいい脚本も、断るのか?
長い付き合いののち、ようやく秘訣がわかった。
決して倦まずたゆまず、彼のために脚本を2度3度と喜んで書きなおし、
決して「ノ―」というチャンスを与えないことだ。
金城武はピーター・チャンの3本の作品に出演している。
出演者の顔触れは絶えず変わる。ひとり、金城武だけがいつもいる。
一番難しかったのは「投名状(ウォーロード)」のときだった。
初めは香港の若手男優、ニコラス・ツェー、ショーン・ユー、
エディソン・チャンといった人たちで撮るつもりだった。
金城武は兄貴*で、後にジェット・リーが演じた役である。
ピーター・チャンは、彼の残忍さ、殺気を見出したのだ。
映画は準備を進めるほどにどんどん大きくなっていき、
最後には、ジェット・リー、アンディ・ラウ、金城武の出演となり、
彼は逆に一番年下役になってしまった。
出番も、心の矛盾も衝突も、一切合財が弱められた。
長兄から三男に変わったことに、ピーター・チャンは申し訳が立たないと感じ、
わざわざ日本まで飛んで、金城武に謝り2人で話をした。
金城武は、おいしい魚をごちそうしてくれた。
それは礼を尽くした食事だったが、よい返答はどんな形でも示されなかった。
「如果・愛(ウィンター・ソング)」で一緒に仕事をしてから、
ピーター・チャンは金城武をよくわかっていたので、帰りの飛行機では気が気でなかった。
金城武は断るのは好まなかったが、しかしその礼儀正しさを変えなかった。
非常に日本人的な態度である。
ピーター・チャンが飛行機を降りたとき、意外なことに金城武から電話がかかってきた。
「ぼく、演ります!」
脚本を断る≠アとについて、金城武は本当にすまなそうな顔で話す。
彼はいつもこう言うのだ。
「ぼくに声をかけないでくれればいいのに。
ぼくは自分がやれるのかどうか全くわからないんです」
「監督が機会をくれるのなら、その作品に色を加えられるといいなと思います。
ギャラをもらったら、台詞を全部言ってそれでおしまい、というのでなく。
やりとげたいと思います。効果を出せればいいなと思っているだけなんです」
彼は自分自身に対して非常に厳しい。周りが彼に対する以上に厳しい。
そのこだわる気持ちは暮らしのなかの些細なことにも表れている。
普段、荷造りをするとき、時間はたっぷりあっても、いつも最後の一瞬にならないと終わらない。
服を1着、入れてはまた出し、出かける間際になってようやく、
あわただしくスーツケースを閉めて、急いで家を出るのだ。
実際は、金城武の衣服は決して多くない。
サンドラ・ンが、彼はいつも何枚かのTシャツを着回しているのだと笑っている。
彼はおおらかに、スーパーで売っているような、絵柄の無い、
安いものが好きなんだと認める。
「武侠」の後、またピーター・チャンの次の作品へのオファーが来た。
「この物語は『投名状』よりも壮大で、清朝末期から民国初期の話を描いたものです。
固執するタチの男がいて、自分の父親をひどく嫌っている。
というのはその父親は日和見主義の人間だからです。
金城武がこの息子で、彼にとても合った役ですよ」
ついに金城武は、もうピーター・チャンを断らず、
気持ちよく引き受けるようになったのである。
星の王子さまは星を1つ持っていた。孤独な人間は都市を持っている。
自分を閉ざし、1人で戦い、1人で将棋をする。
金城武の恋愛がどんな状況なのかは、1つの謎である。
ほとんど毎年、秘密結婚したと噂が流れ、そのたび否定される。
今、彼は独身≠ナあることを仕事のせいにしている。
仕事で何カ月も、内地や辺境の地で過ごさねばならないからというのだ。
「(もし恋をしたら)相手にはできるだけそばにいてほしい。
でも、今は不可能だから、できるだけ(そういうことは)考えないようにしています」
美しい容貌、なのに、孤独に1人、
こんなめぐりあわせが、数限りない憶測を引き起こすのも無理はない。
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09月01日(木)
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