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武ニュースDiary
by あさかぜ
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■GQ取材記F
あの声の大きさなんか全然違うので、物怖じしていない、
自信を持ってそこにいるなあと感じて、本当に大きな刺激になりましたね。
ぼくらの話し方が全然力がないように聞こえてしまう」
金城武はばつが悪そうに、傍らのマネジャーをちらりと見る。

「彼の心には、飛躍が必要になっているんだろう」と陶爺は話す。
「私は彼に、もう少しリラックスするようにと言うんだ。
年とともに、もっと力を抜きなさい、そんなに自分を閉ざすなとね。
彼のやる役は受動的なものが多い。それは彼が綺麗だからだよ。
だから人を叩く場面があったとしても、普通は女に先に襲われてとか、
何か事情でやむを得ずという場合だ。
主体的に打って出る役に挑戦することを覚えなくちゃいけないと思うよ。
スターとして、彼は前途洋々だと思うね」

Lico 役者として、何かめざす目標がありますか?

金城武 ぼくは、最終目標なんか持たないで、今の一時一時を
楽しめるようになるのでいいのじゃないかなと思ってしまうんですよね。
今、この映画に出るチャンスがあるのだから、その映画の中身を、
あるいはそこでの人との出会いを十分に楽しめると思うんです。

Lico あなたは、俳優の身分から一歩踏み出す考えはありませんか?

金城武 もちろん役者をちゃんとやりたいと思います、だって好きだから。
他のことをやってみたくないかと聞かれれば、ないわけじゃないけど、
まだ自分にはできないと思う。
まだskillsが足りない。技術がそこまで行っていません。
波があって、20歳のときは監督になりたいと思ってました。
でも、当時のぼくは、「すげえやつ」になりたかっただけで、
20歳のときの「監督になる」というのは観念にすぎなかった。
30歳を越えて、ずっと映画をやってきて、チャン・イーモウに出会い、ピーター・チャンに出会い、
ジョン・ウーに出会い、どんどん規模が大きくなって、わあ! 数千人も、となったら、
監督なんかやりたくない、こんな大変だなんて、と考えるようになりましたよ。

映像を創り出すことはとても面白いと思う。で、役者としてそれをするチャンスがある。
まず、自分の役をあれこれ解釈する楽しさがあるし、
第二に、映画作りの環境に飛び込んで、自分が見てみたかったこと、
つまり、どうやって照明をするのか、どんなレンズを使うのか、
どんなスピードで撮るのかという技術的なことと、
同時に本当にいろいろな役者達の演技法を見ることもできる。
ぼくは演劇学校出身ではなく、ただ、他の人がやっていることを見て経験から学んだだけ。
たくさん見ることは吸収することで、そこから学ぶことができます。
ぼくにそれ以外のことができるかどうか、自分自身わからない。
だけど、自分にあるもの、それは役者であるということなんです。
だから、あのとき歌を歌うことはやめたんです」

金城武はテーブルの角の位置に腰掛けている。
左手には銀色の指輪が2つ、薬指と中指に。
右手の1つは中指にはめてあった。
指輪には簡単な筋が刻まれ、純銀の光沢を放っているが、落ち着いた光だ。
左腕に淡いコハク色の数珠をはめている。
「なんという石か知らない。会社の人たちはみんなしているんです。
みんながしてるからしてるだけ」

「この指輪は先生が送ってくれたものでもあるんです。幸運を呼ぶんですよ」と彼は言った。
「信じます?」私は聞く。
「こういうことは信じたほうがいいですよ」
と指輪をはずした。私が見せてほしいと言ったのだ――
彼は手で弄び、巧みに時間を引き延ばし、結局手渡してはくれなかった。
彼は右手から抜き取った指輪を左手の指にはめ、左右の手の指輪を眺めて冗談を言った。
「最近どうって聞かれたら、婚約したよと答えるんだ。3人のどれにするか考え中だとね」

「これはアメリカのスーパーで買ったんです」
金城武はうつむいて、着ているTシャツを見た――胸には6つの小さなポケットが並んでいる。
どれにも銀色の金属をはめこんだおおいがついている。

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03月04日(木)
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