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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■ 介護業界崩壊の危機
希望失うヘルパー、在宅介護危機/“老い”は悪か?B
連載<“老い”は悪か?>B
2007/10/29 20:11 キャリアブレイン

 施設から在宅へ―。厚生労働省が掲げる方針の中核たる訪問介護。しかし、それを担うホームヘルパーたちの不満は、昨年4月の介護保険法の改正で限界まで達している。低賃金をはじめとする劣悪な労働環境、また機械的にならざるを得ない高齢者との関係。質の高い介護を提供し、高齢者の“暮らし”を十分に支える体制からはほど遠い。訪問介護現場で今、果たして何が起きているのか。ホームヘルパーたちの悲痛な叫びを聞いた。(金子俊介)

【労働削られ賃金減少】
 「昨年4月以降、賃金が大幅に下がってしまった」。東京都品川区で登録型のヘルパーとして働くFさん(66歳女性)はこう自らの窮状を明かす。
 Fさんは定年まで事務職として勤め、5年前に老後の仕事としてヘルパーを選んだ。始めたころのFさんの月給は10万円を超えていたが、昨年の介護保険法の改正以降、月給は7〜8万円に減少。昨年から年金も支給され始めたが、合わせて20万円に満たない。現在、息子夫婦と3人暮らしで、先立った夫が家も残してくれた。Fさんは言う。「そうでなかったらと思うとゾッとする」。

 介護保険法改正以降、賃金が下がったヘルパーはFさんだけではない。財団法人介護労働安定センターが昨年10月に実施した調査によると、改正に伴う仕事や職場環境に変化が「あった」としたヘルパーは55.8%で、そのうち「賃金が下がった」と回答した人は22.1%に上った。

 Fさんは賃金が下がった理由について「労働時間の減少のせい」と話す。調査でも、仕事などに変化が「あった」とした人のうち、「労働時間が減少した」と答えた人は20.4%。この数値は、ケアマネジャーなど他の職種で「減少した」とする回答が1%〜2%なのに対して極端に高い。

【サービスに打ち切り設定】
 なぜヘルパーの労働時間が削られたのか。法改正以降、要介護者の自立支援の名の下に「新予防給付」の創設が大きな影響を及ぼしているといえる。新予防給付とは、比較的軽度の要介護度1・2の要介護者を要支援者へと移行し、要介護とは別体系でサービスを提供するもの。要支援になると訪問サービスの利用が月の定額で定められるようになった。これにより、改正前まで週2回受けられていたサービスが週1回に削減された利用者が続出。昨年1年間で、要介護度1のサービス受給者は約110万人から約70万に減少する一方、要支援のサービス受給者は約5万人から約70万人に増加している。このことが結果としてヘルパーの仕事を減少させているのだ。
 また、要介護者に対するサービスも変わった。要介護者の訪問サービスには、おむつ換えなどの「身体介護」と、買い物や調理を手伝うなどの「生活援助」の2種類がある。この生活援助について、“長時間利用の適正化”の名の下に、昨年の法改正で、時間の上限が設定された。それまで1時間30分以上の生活援助にも、30分増すごとに与えられていた報酬単位が加算されなくなったのだ。すると、事業者にとって収入にならない1時間30分を超える生活援助は無意味なものになる。これでは、長時間の生活援助は打ち切りにならざるをえない。

 賃金が低い理由はまだある。移動時間や待ち時間を含んだ拘束時間に対して賃金が支払われていないことも大きな問題だ。
 Fさんは、「3時間の勤務の場合、実際は6時間ほどの拘束を受けるが、賃金は3時間分にとどまる」と打ち明ける。これではまるでタダ働き当然といえる。さらに、交通費が出ない、利用キャンセルに対して賃金が出ない、社会保障は全くない――など。Fさんらヘルパーの待遇に関する怒りは尽きない。

 Fさんは猛勉強によって、昨年、介護福祉士の資格を取得。事業者との交渉の末、時給100円分の資格手当を勝ち得た。そのほかにも、待遇に関するさまざまな提案を主張してきたが、事業者は「経営が赤字なので」と説明するばかりで実現には至っていない。Fさんは「利用者からも評判が良く、健全な事業者なので、責めるにも責められない」と複雑な心境を語った。

【機械的な仕事に疑問】

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02月16日(土)
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