ID:22831
『日々の映像』
by 石田ふたみ
[257821hit]

■プリウス問題:日本製品の信頼を左右
 ところが、それまでに生産した約30万台の新型プリウスは、苦情があれば改修すると決めていただけだった。
 苦情が予想外の規模で噴出し、世論の批判も強まったため、日本と米国で新型プリウスを全車無償で修理する方針に転じた。
 まったく遅すぎる対応だ。本来ならソフトの手直しをする前に、すでに売ったすべての新型プリウスの改修を徹底するのが筋ではないか。
 アクセルペダル問題に続くトヨタの鈍感すぎる対応ぶりの背景には、顧客の身になって考えるという感度の衰えがあるようにすら見える。
 トヨタは、プリウスのブレーキも「コンマ何秒かの利きの遅れであり、ドライバーの感覚の問題」と認識しているらしいが、コンマ何秒がいかに長く感じられるか、ハンドルを握ったことがある人なら誰でも知っている。噴出する苦情の多さが、顧客の不安を何より雄弁に物語っている。
 そもそも、ドライバーの感覚を含めた人間の機能を代替して、安全と性能を高めることがコンピューター制御の核心ではないか。
 最初から完璧(かんぺき)な新型車を開発することは不可能であり、顧客の苦情をもとに改良して完成度を上げるのはごく普通の取り組みだ。だが、ブレーキのような人命にかかわる問題で苦情があれば、迅速な対応は不可欠だ。
 自動車に限らず、部品は複雑化し調達はグローバル化する一方で、品質管理が難しい時代だ。だからこそ、消費者は安全を最も重視する「ものづくり」を企業に求めている。その期待に応えなくては生き残れない。
 一連の蹉跌(さてつ)を安全な車づくりの糧とする謙虚さをトヨタがどこまで示せるか、世界中が見ている。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
社説1 日本製品の信頼左右するトヨタの対応(2/6)
                    2010年2月6日  日経
 最強企業といわれたトヨタ自動車が大きな試練を迎えた。お家芸の「品質・安全」面で問題が相次ぎ、批判の矢面にさらされている。

 対応を一歩誤れば、営々と築いてきた「トヨタ車は高品質」という信頼が傷つき、長期的な成長力や収益性が揺らぎかねない正念場だ。

 豊田章男社長は5日の会見で「お客様の不安を取り除くことを最優先にやっていく」と表明したが、言葉だけでは事態は沈静化しない。不具合の原因究明と対策が急務である。

 品質問題の背景には、産業の構造変化がある。過去10年で自動車生産や部品調達のグローバル化が大きく進展した。トヨタも2000年には175万台だった海外生産車を、ピークの07年には430万台と倍増以上に伸ばしてきた。急拡大の過程で品質確保がおろそかになっていなかったか。反省と点検が欠かせない。

 もう一つは、技術の高度化だ。機械工学の産物だった自動車の世界でも、近年はIT(情報技術)を駆使した電子制御やソフトウエア技術の比重が増している。

 今やトヨタの代表車種になったハイブリッド車の「プリウス」について、ブレーキに関する苦情が相次いでいる問題でも、電子制御システムに原因があった。過去の成功におごることなく、電子時代に順応した新たな品質確保の仕組みが必要だ。

 さらに会社の危機管理能力も厳しく問われている。一連の問題のきっかけは、昨夏に米カリフォルニア州で一家4人が亡くなった「レクサス車」の事故だが、トヨタの対応はお世辞にも迅速だったとは言い難い。

 一つの問題がくすぶり続ける間に、次の問題が浮上し、どんどん事態が悪化する。負の循環に早期に終止符を打たなければ、消費者のトヨタ車離れが世界で進むだろう。

 問題の震源地である米国では今年秋に中間選挙を控え、保護主義台頭の兆しが出ている。外国メーカーへの風当たりが強まる可能性もある。

 それだけに、トヨタは社長自ら先頭に立って手早く対応策をとることで、消費者の不安や社会の批判に正面から応えるべきだ。トヨタの社員や株主に対しても、今後の会社の針路について明確で力強いメッセージが要る。


[5]続きを読む

02月09日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る