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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■ 新型インフルエンザ情報
 テロや動乱並みの危機管理の必要性を強調したが、PTが予算化させようと数値目標を掲げたのは、水際対策の柱となる「(大流行後)ワクチン製造の期間短縮」と「抗ウイルス薬の備蓄増加」の2点だけ。その他の施策は具体的内容に乏しく、予算化は不透明な情勢だ。厚労省幹部も「緊縮財政の中、実行性は疑問だ」と危ぶむ。
積み残しも
 むしろ、備蓄ワクチンをだれから優先的に接種するかなど、当初はPTが決めるはずだった複数の課題を先送りした形で、現場対策の実施主体と位置付けられる都道府県からは不満が上がる。
 指針によると、知事は感染拡大を抑えるため、住民に集会の自粛や移動制限などを要請できるが、これを強制する法的な裏付けはない。このため複数の自治体が改善を求めたが、憲法を侵害しかねない要求に、提言は「法整備の必要性を検討する」にとどまった。「権限がないまま流行に臨まねばならない」とある自治体担当者は困惑する。
 患者と最前線で向きあう医療機関も同様だ。都道府県は医療機関に新型インフルエンザ患者専用の窓口となる「発熱外来」を準備することになっているが、設置に名乗りを上げる病院は少ない。ある大学病院副院長は「患者が殺到した時に院内感染を防ぐための支援をしてくれるのか、具体的な記載がない」とし、発熱外来などの設置に二の足を踏む。
 押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は「日本の対策は、水際での侵入阻止に偏り過ぎている。流行拡大の抑制を重視する米国のように、移動制限や学校閉鎖や、抗ウイルス薬の予防投与などを組み合わせた対策が必要だ」と語る。
与党PTによる主な提言
抗インフルエンザ薬の備蓄量を国民の40〜50%分まで引き上げる
細胞培養法などの研究開発を推進し、半年で国民全員分の流行後ワクチンを製造する
新型インフルエンザ発生時の在外邦人の帰国に向けた自衛隊機などの活用
大規模災害時同様に都道府県知事に権限を付与する法的整備の必要性を検討
インフルエンザウイルス研究センターの設置
社会機能維持者や感染率が高い地域、若年者を優先したワクチン接種
ワクチン「発生半年内に国民全員分」
海外から新技術 製造拠点必要に

 PTが、水際対策の柱として挙げたのは〈1〉発生後に作る新型ワクチンを半年以内に国民全員分製造〈2〉タミフルなどの抗インフルエンザ薬の備蓄を現在の国民23%分から40〜50%まで増やす――の2点。しかし、クリアすべき課題も多い。
 現在の卵を利用してワクチンを製造する方法では、国民全員分を確保するのに1年半以上かかる。そのため、半年での供給を実現するには、海外の製薬企業などが持つ新技術(細胞培養法)を導入しなくてはならない。海外では、米国が複数の製薬会社に研究費を出して、この方法による新型ワクチンの治験を委託。英国やオーストリアでも、細胞培養ワクチンを優先的に供給してもらう契約を企業と結んでいる。
 提言では、どこから技術導入をするか明記していないが、PTメンバーの坂口力元厚労相は「いつ起きてもおかしくない事態に備えた緊急手段」と海外からの導入は不可欠との姿勢だ。
 しかし、ワクチン産業に外資が参入すれば、保護されてきた国内の小規模なワクチン産業が打撃を受けるとの批判もある。
 国のワクチン産業ビジョン推進委員会座長を務めた富山県衛生研究所の倉田毅所長は「安全保障の観点から国内企業が製造していたワクチンが自由競争になれば、安定供給ができなくなる恐れがある」と懸念する。
 また、新たなワクチン供給のため、製造拠点の整備が必要になる。細胞培養法は、サルや犬、昆虫、人などの細胞を使って、ウイルス(遺伝子を含む)を増やし、不活性化して感染力をなくし製品化する方法だ。国民全員分の生産体制を構築するまでは、早くても3〜5年はかかる。この間研究・開発や工場建設に数百億〜1000億円かかるとされる予算をどうするか、それ以前に新型インフルが発生した場合、どう対処するかも課題となる。一方で、細胞培養技術は「安全性が確認されていない途上の技術」と指摘する声もある。
 抗インフルエンザ薬についても、効率よく患者らに行き渡る方策が不十分とされ、具体的な配備計画を整える必要がある。

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07月07日(月)
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