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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■ 介護業界崩壊の危機
昨年の9月から10月にかけて財団法人介護労働安定センターが実施した調査によると、2825人のケアマネジャーのうち、44.8%が「改正介護保険法に伴う仕事や職場環境に変化があった」と回答。「あった」と回答した人に変化の内容を聞いたところ、63.9%が「業務量が増えた」、35.3%が「労働時間が増加した」と回答している。
このように事務的な作業ばかりが上乗せされていくことについてNさんは疑問視する。「要介護者といっても、状態や家族との関係などによってその抱えているニーズは様々。モニタリングを実施するにしても、週に1・2回は訪問したい利用者もいれば、必ずしも月に1回訪問の必要のない利用者もいる。しかし、限られた時間の中では、規定がある以上、満べんなく対応せざるをえないのが現状」。
【低い介護報酬に苦悩】
“限界”のもう1つは報酬だ。居宅介護支援事業所の収入である「居宅介護支援費」の報酬体系のあり方が、利用者のための中立公正なケアマネジメントを妨げているという。
このことについて話してくれたのは、東京都23区内で2年前に有限会社として居宅介護支援事業所を立ち上げたケアマネジャーのOさん(男性)。
居宅介護支援事業所の収入は、事業所に所属するケアマネジャーがケアプランを取り扱う件数ごとに上がる報酬体系で、昨年度の制度改正でその仕組みに大きな変化があった。具体的には、事業所のケアマネジャーが担当する1人あたりのケアプラン取り扱い平均件数が、「40件未満」「40件以上60件未満」「60件以上」の3段階で介護報酬に差が設けられ、また同時に、利用者の要介護度の軽重によっても差が設けられることになった(=表@)。
Oさんは、この報酬体系について、「ケアマネジャー1人あたりが担当する件数が39件を超えると、どうやっても報酬が低くなるように設定されていて、50件も60件も担当していた改正以前よりは、確かに少ない件数に従事できる」と一定程度評価。しかし、「それにしても報酬設定が低すぎることは変わっていない」と溜め息をつく。
実際に居宅介護支援費はどの程度の収入をもたらすのか。仮に、この制度上で最大の介護報酬を算定できるよう1人のケアマネジャーが要介護度3・4・5の利用者を39件担当したとすると、介護報酬は1300×39で50,700単位となり、金額に換算しても約50万円。実際のケースでは要介護1・2の利用者も担当するので、40万円ほどにしかならず、人件費などの諸経費を考えると「居宅介護支援事業所だけでは赤字にならざるをえない」とOさんは話す。
赤字補填のため、全国のほとんどの居宅介護支援事業所では、訪問サービスや通所サービスの事業所を併設。ケアマネジャーは生活のために、所属する事業所の他サービスへ利用者を誘導する役割を負わざるをえない現状がある。昨年度の制度改正では、居宅介護支援事業所で作成したケアプランで特定の事業者にサービスを9割以上集中させているものを減算とする「特定事業所集中減算」が創設されたが、Oさんによると、「1割程度なら簡単に外部に委託できるため、この規定は何の意味も持たない」という。
Oさんは、「各種報道でコムスンとケアマネジャーのかかわりが指摘されたが、本質的な問題は企業体質とは別のところにある」と指摘。「ケアマネジメントの適正化を掲げるのであれば、国は居宅介護支援費の報酬を見直し、ケアマネジャーの中立公正な立場を確保することが先決」と主張した。
このような介護報酬設定の中では、ケアマネジャーへ支払われる給与も当然低い。財団法人介護労働安定センターが実施した調査によると、4,549人の常勤のケアマネジャーの諸手当などを含めた1ヵ月の平均賃金は26万4千円だった。
前述のNさんは現在1児の父。来月末には2人目の子どもも誕生する。しかし、「自分の収入だけでは家計を支えてはいけない」として、「産休を終えたら妻にもまた働いてもらわざるをえない」と話す。「担当しているサービス利用者から『ありがとう』と言われることにはとてもやりがいを感じる。しかし、私も生活している身だから、それだけでは暮らしていけない」。Nさんはそう言って下を向いた。
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02月16日(土)
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