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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■ 認知症と高齢者虐待
二〇〇六年から市と地域包括支援センターは年に二回、弟に同行する形で、父親に介護保険を受けさせるよう長女を説得してきたが、拒まれてきた。家に入れてもらえない弟が、長女と窓越しに口論していると、様子を見に顔を出す父親。「これが唯一の父親の安否確認手段」(同市担当者)だった。
状況が変わったのは、今月四日。年始に来た弟らの前に父親は姿を現さなかった。
「十二月から言い争う声がしない」「ごみに紙おむつがなくなった」という情報も入り、父親の安否に不安を抱いた市は十八日、田無署立ち会いで、高齢者虐待防止法に基づく立ち入り調査を実施。長女は検査を拒否し、強引に玄関を閉めようとしたため同法違反(正当な理由なく調査を妨害)の現行犯で逮捕された。
保護された父親に健康上の問題はなかった。現在市内の病院に入院中で「要介護2相当。医師によると軽い認知症もある」(福祉関係者)という。
高齢者虐待防止法は、「高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがある場合」自治体に立ち入り調査を認めている。今回のケースは、住環境が劣悪で、典型的な介護放棄に該当。怒声を浴びせるなど心理的虐待の疑いも濃厚だったが、「立ち入り調査が必要か、判断が難しかった」と同市担当者。「逮捕までいかず、(長女との)話し合いで解決できればよかった」と悔やむ。
一方、「年二回の安否確認は少ない」(同署)と市側を非難する声も。近隣三市の事例研究会では「面会を拒絶される状況で、やむを得ない対応と判断された」(同市担当者)という。
行政権限の行使に踏み込めない自治体は少なくない。医療経済研究機構が千九十六市区町村に行った調査では、今回の事件のように被虐待者と養護者の関係が共依存の場合「対応が大変困難」とする回答が73%を占めた。
家庭のプライバシーの問題もあり、同法の「重大な危険」の判断が難しいからだ。厚生労働省も「各自治体の判断に任せている」(認知症・虐待防止法推進室)と突き放す。同省が留意点をまとめた〇六年四月の資料も、安全を優先する迅速な対応を求める一方「時間をかけた対応が必要となることもある」と、あいまいな言い回しだ。
西東京市は弟と話し合い、今後、父親を長女から引き離し、市の老人保健施設などに入居させる考えだ。しかし父親の意向を確認する必要があり、引き離しがスムーズに進むかどうか分からない。
同市担当者は「高齢化が進めば、虐待の事例は増えるが、個々の事情は異なり、マニュアル化した対応は難しい。市として地域のネットワークづくりを進めている。虐待の情報が集まりやすくなれば、早期対応が可能になる」と話している。
02月15日(金)
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